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ID番号 07459
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 横浜市(並木第一小学校)事件
争点
事案概要  Y市公立小学校の教諭であるXが、Xが担任する児童で、てんかん症を有し長期欠勤の傾向にあったAの母親からXの指導が厳しすぎるので転校させたいとの要請を受けた校長によって、相談なしにAを校長室登校とする取扱がなされ、その後Aが教室に戻りたい様子であったことから、校長からAに対する指導態度を改めると同時に教室に迎え入れて欲しいと述べられたが、Xは了解を得ないで校長室登校としたことを強く抗議したうえ、その経緯やAの母親の意向等が把握できないとして、母親との面談等を求めたが、校長がこれに全く意を払わなかったことから、話合いはまとまらず、その後校長から担任を外す処分を受け、自立神経失調症になって休職するに至った(校長室登校時前後から精神的に不安定な状態であった)ことから、国家賠償法一条一項に基づき、右校長の行為によって被ったとする慰謝料等の損害賠償を請求したケースの控訴審で、本件処分前後において、担任であるXの帰責性が強いため既にクラス内に深刻な混乱が生じていて、学級の健全なる運営が不可能若しくは著しく困難である状態が生じていたとは認められず、その他、解任を合理的に説明できるだけの理由を認めることはできないとして、本件処分は校長に認められた裁量権を濫用しもしくは逸脱しているものとして、違法であり、本件処分により疾病に罹患し長期にわたり勤務できなかったことによって被った精神的損害賠償につき請求を一部認容した原審の判断(慰謝料について不法行為の日から支払ずみまでの遅延損害金を求める附帯請求は棄却)が相当であるとして、Yの控訴及びXの慰謝料増額の附帯控訴が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法709条
民法710条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 担務変更・勤務形態の変更
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 1999年11月15日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ネ) 1578 
平成10年 (ネ) 3715 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例788号60頁/判例地方自治202号35頁
審級関係 一審/横浜地/平10. 3.27/平成7年(ワ)1675号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-担務変更〕
 被控訴人が担当していた二年四組の児童の保護者の中には本件処分について十分納得していない者が相当数おり、被控訴人が担任を外されることによる児童への影響を心配する者も少なくなかった。
 これらを総合してみると、A校長が校長として本件小学校に赴任して間もない時期に、一年生から持ち上がりで同じ学級を担任していた被控訴人を前記のような経緯により担任から外したことについては、慎重な配慮が欠けていたといわなければならない。」
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 「担任の地位は校内分掌上のもので教師は担任となることを法的に保障されているものではなく、担任を解除されたからといって教員としての地位や給与その他の法律的地位又は経済的な利益が侵害されるものではない。しかし、小学校の教師は科目ごとに担当教師が定められるのではなく、担任教師が受け持った教室の児童について全科目を指導するのが原則であり、弁論の全趣旨によると本件処分が行われた当時の本件小学校においても同様の実情にあったことが認められる。そのような実情の下において年度途中で病気や本人の都合等以外の理由により担任を外されることはいわば駄目教師としての烙印を押されるに等しく(〈人証略〉)、教師として屈辱的で不名誉なことであるというべきであるから、一旦担任となることを命じられた以上年度途中で合理的理由なく担任を解除されることがないという教師の期待は教師の誰しもが抱く自然なものであるということができる。そして右のような観点からすれば年度途中で合理的理由なく担任を解除された教師が強い衝撃を受け精神的に変調を来すことがあり得ることは十分考えられることであるから、A校長は被控訴人が本件処分を受けたことを原因として前記疾患を発症することを予見することが可能であったといわなければならない。」