ID番号 | : | 07524 |
事件名 | : | 懲戒処分取消請求上告事件 |
いわゆる事件名 | : | 全農林(八二秋季年末闘争)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 農林水産省の職員で全農林労働組合の組合員Xら七名(控訴時六名、上告時五名)が、昭和五七年の賃上げを内容とする人事院勧告が国の財政事情から全面凍結されたことに対する全農林による二度にわたる抗議時限ストライキの実施に当たり、右公務員共闘の統一ストライキ立案当初からこれに参画し、闘争方針案の決定等に関与し、右闘争方針を実施するためのオルグ活動に参加し、全国各地において二日ないし五日間にわたりストライキ実施を指導するオルグとしての活動を行ったことが、国家公務員法九八条二項の規定に違反し、同法八二条一号に該当するものとして、三か月から六か月の停職処分を受けたことから、公務員のストライキも憲法上認められるとして右懲戒処分の取消しを請求したケースの上告審で、一審と同様に、公務員の争議行為等を禁止する国家公務員法九八条二項は合憲であるとしたうえで、本件の人事勧告凍結は、国がかつてない多額の歳入不足に至った未曽有の財政事情から極めて異例の措置であり、公務員の争議行為等を制約することに見合う代償措置が画餠に等しいと見られる事態であったとはいえず、本件ストライキは国民全体の共同利益を損なう虞があったものであるところ、Xらのストライキ実施に積極的に関与し指導的な役割を果たした行為は国家公務員法法八二条一号に該当するとともに、その責任は軽いということはできないとし、以前にも停職、減給等の懲戒処分を受けた経歴等からしても、Xらが受けた懲戒処分が社会通念上著しく妥当性を欠き、裁量権者に任された裁量権の範囲を逸脱した違法のものであるということはできないとして、原審の判断を相当として、最高裁はXらの上告を棄却した事例。 |
参照法条 | : | 国家公務員法98条 国家公務員法82条1項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 違法争議行為・組合活動 |
裁判年月日 | : | 2000年3月17日 |
裁判所名 | : | 最高二小 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (行ツ) 132 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 時報1710号168頁/タイムズ1031号162頁/裁判所時報1264号2頁/労働判例780号6頁 |
審級関係 | : | 控訴審/06440/東京高/平 7. 2.28/平成1年(行コ)118号 |
評釈論文 | : | 山本敬生・自治研究77巻10号133~146頁2001年10月/大久保史郎・平成12年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1202〕18~19頁2001年6月 |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 国家公務員法(以下「国公法」という。)九八条二項の規定が憲法二八条に違反するものでないことは、当裁判所の判例(最高裁昭和四三年(あ)第二七八〇号同四八年四月二五日大法廷判決・刑集二七巻四号五四七頁)とするところであり、これと同旨の原審の判断は、正当として是認することができる。論旨は採用することができない。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 結社の自由及び団結権の保護に関する条約(昭和四〇年条約第七号。いわゆるILO八七号条約)三条並びに経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和五四年条約第六号)八条一項(c)は、いずれも公務員の争議権を保障したものとは解されず、国公法九八条二項及び三項並びに本件各懲戒処分が右各条約に違反するものとはいえないとした原審の判断は、正当として是認することができる。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-違法争議行為・組合活動〕 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、右事実関係の下においては、本件ストライキの当時、国家公務員の労働基本権の制約に対する代償措置がその本来の機能を果たしていなかったということができないことは、原判示のとおりであるから、右代償措置が本来の機能を果たしていなかったことを前提とする所論違憲の主張は、その前提を欠く。論旨は採用することができない。 |