全 情 報

ID番号 07555
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 エールフランス事件
争点
事案概要  期間を一年とする臨時契約社員として航空会社に採用された女性Xが、会社から予約業務の減少を理由として二回目の契約を更新しない旨を告げられ、期間満了により契約が終了したことに対し、会社では臨時契約社員の中から正社員が雇用されている実態があると同時に、会社から更新の意向及び正社員への登用を明言され、継続的雇用に対し合理的な期待を有していたとして、(1)雇用契約上の地位を有することの確認及び(2)賃金の支払を求めて仮処分を申し立てたケースで、会社の継続雇用を前提とする発言等から、本件契約は更新を予定した契約であり、本件更新拒絶の合理性を肯定できないとして、(2)についての保全の必要性が認容された事例。
参照法条 労働基準法14条
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2000年5月9日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成11年 (ヨ) 10089 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労経速報1742号12頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 債務者が、債権者に対し、名古屋-パリ直行便が就航することに伴う業務量増加に対応するための臨時採用であると説明したことはなく、むしろ、継続して雇用することを前提とした発言をした。債務者は、これを否定するが、臨時契約社員の中から正社員が雇用されているという実態があり、Aの後任を至急確保する必要があったことからすると、歓心を買うような発言をしたものと推認するのが相当である。そして、雇用後においても、上司が、「正社員になってもらいたい」といった趣旨の発言をしたことは、正社員の雇用についての右のような実態があることからすると、ありうることというべきである。その発言は、職務の精励を求めるためのもので、正社員にするという約束とはいえないが、これが本件契約の更新に対する期待をもたらすものであることは否定しがたい。
 3 以上によれば、本件契約は、更新を予定した契約であって、更新拒絶には、合理的な理由を必要とするというべきである。〔中略〕
〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 債務者は、更新拒絶の理由について、タヒチ線が廃止されたこと、ヌメア便の予約形態が変わったこと及び名古屋-パリ直行便が廃止になったことによる業務量の減少を挙げる。
 確かに、タヒチ線が廃止されたこと及びヌメア便の予約形態が変わったことにより予約業務量が減少したことは推認できるが、審尋の全趣旨によっても、その量は、さほど多くはないものといえる。名古屋-パリ直行便の廃止についても、その予約業務は、受付その他を名古屋支店においても行っており、債権者以外の者の担当する部分もあり、右廃止によって、債権者の行う業務量が格段に減少したということも認められない。また、西日本地区における予約業務量は減少傾向にあるが、右は名古屋支店又は福岡支店において行われる業務をも含むものであり、平成一一年六月の時点において、これが債権者について本件更新拒絶を正当とする程度の減少があったとする疎明には至っていない。
 してみれば、本件更新拒絶については、未だ合理性を肯定できないから、本件契約は、平成一一年七月七日以降も、継続したものということができる。