全 情 報

ID番号 07565
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 越前屋多崎事件
争点
事案概要  本社の経理課で一五年間支払準備業務に従事していた女性労働者が、コンピューター化に伴い担当業務がなくなったことを理由に、月島への配転命令が出され、月島で約三か月間にわたって勤務したが、業務遂行能力が極めて低く、上司及び同僚との協調を欠き、所属事業所長の業務命令に従わない旨を宣言した後には一切の業務を行わない等、月島における業務の円滑な進行に支障を来したため、本社に再度転勤になったが、その後も業務遂行能力に欠けるものであったことから、退職勧奨されたが、これを拒否したため、就業規則の規定(業務能力が著しく劣り、又は勤務成績が著しく不良のときに解雇する旨等の内容)に基づいて解雇されたことから、労働契約上の地位の確認及び賃金支払を請求したケースで、解雇は合理的なものであり、社会的相当性を欠き解雇権を濫用したものであるとはいえないとして請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量
裁判年月日 2000年6月6日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 27565 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1753号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-職務能力・技量〕
 前記一9、10及び12ないし16認定の各事実を総合すれば、原告は、月島で勤務していた際、業務遂行能力が極めて低かったこと、上司及び同僚との協調を著しく欠いたこと、さらに所属事業所のA所長の業務命令には従わない旨を宣言して、その後一切の業務を行わず、月島における被告の業務の円滑な進行に支障をきたしたこと、また、本社に再度配転となった後も業務遂行能力に欠けるものであったことの各事実が認められる。
 もっとも、原告は、被告に入社後、月島に配転となるまでの約一五年間本社において経理業務を行っており、その間、業務処理自体について問題が指摘されたことはなかった事実が認められるものの、前記認定の各事実からすれば、原告には、新たに担当を命じられた業務を遂行する意欲及び能力が不足しており、また、上司の指揮命令に従って誠実に業務を遂行しようとする意識及び同僚と協調して業務を遂行しようとする意識が著しく欠けているものといわざるを得ず、その程度は、現実に月島における被告会社の業務の円滑な遂行に支障をきたすほどのものであったのであり、このような事実関係からすれば、原告は、被告の就業規則四〇条(1)号所定の「業務能力が著しく劣り、または勤務成績が著しく不良のとき」及び同条(3)号、五四条(2)号所定の「正当な理由がなく就業を拒んだとき」に該当するものと認められるから、本件解雇は合理的なものであり、これが著しく社会的相当性を欠き、解雇権を濫用したものであるということはできない。