ID番号 | : | 07583 |
事件名 | : | 賃金支払等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 小坂ふくし会事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 社会福祉法人の職員であるXら三名が、雇用契約締結後、辞令の交付を受けて昇給・昇格が行われてきたが、賃金引下げ及び二名が降職された各処分(X1:主任看護婦から看護婦へ変更、三級一一号から二級九号、約四・一万円減額 X2:主任看護婦から看護婦、三級一二号から二級八号約六・四万円減額 X3:二級一〇号から一級一四号、約二・八万減額)が無効であるとして、(1)二年分の差額賃金の支払、また(2)不当な右処分及び不誠実な団体交渉の対応により精神的な損害を被ったとして慰藉料の支払を請求したケースで、(1)については、XらとYは各辞令の交付によって賃金について合意がなされていたことから、本件処分はXらの同意なしになされた一方的な不利益変更で無効であり、また降格についても減給を伴うものであるから、一方的降格処分は無効であるとして、Yには本件処分がないことを前提とした賃金、賞与及び特殊業務手当を支払う義務があるとして差額賃金の支払請求が認容され、(2)についても、団体交渉については全体的にみてYに不誠実と評する態度があったとまでは言い切れず、賃金引下げの必要性(介護保険制度の施行に伴う大幅な減収が見込まれることによる人件費削減と主張された)も一応は首肯し得るのであるが、賃金という労働契約上の重要な内容を一方的に減額したことは不法行為に該当するとして、請求が一部認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法11条 民法709条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 人事権 / 降格 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2000年7月18日 |
裁判所名 | : | 秋田地大館支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 45 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例796号74頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 嵩さやか・ジュリスト1218号143~146頁2002年3月1日 |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・賃金の減額〕 前記のように、被告と原告らは各辞令の交付によって、賃金についての労働契約が合意されていた。労働契約において賃金は最も重要な労働条件としての契約要素であるから、これを従業員の同意を得ることなく一方的に不利益に変更することはできないというべきである。本件処分は、原告らの同意を得ないで敢行されたことは争いがなく、たとえ、被告が主張するように、被告法人における人件費が大きく、介護保険法の施行にあたり大幅な減収が見込まれたとしても、一方的な減給処分は無効である。 〔労働契約-人事権-降格〕 降格についても、これに減給が伴うものであるから、これまた、一方的な降格処分は無効である。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 右1及び2において認定した事情を総合すると、団体交渉については、全体的にみて、被告側に不誠実と評する態度があったとまでは言い切れないし、また、賃金引下げの必要性も一応は首肯し得るのであるが、これらのことを考慮しても、被告が賃金という労働契約の最も重要な内容を一方的に減額したことは不法行為に当たり、これにより、原告らが多大な精神的損害を余儀なくされたということは否定できず、これを慰謝するために、被告に対し各原告につき10万円を支払わせるのが相当である。 |