ID番号 | : | 07586 |
事件名 | : | 出向命令無効確認請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 川崎製鉄(出向)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 出向に関し詳細な就業規則、労働協約、出向協定を有する鉄鋼一貫メーカーYに入社し整備課等で勤務後、関連会社Aに出向し神戸工場で勤務していたXら二名が、経営損失の発生等経営困難な状況からの脱出・鉄鋼事業における競争力強化を目的とするYの神戸工場閉鎖に伴いAが同工場から撤退したため、Yから勤務地を西宮へ異動するか否かの打診を受けたがこれを拒否したため、AからYへ戻り、総務部等に配属になり、その後、労働組合の了承を得たYから、他の社員とともに当時新しく設立したYの五〇パーセント出資会社の一〇〇パーセント子会社Bへの出向に関する説明がなされ、出向命令が発せられたため、これに対して異議を留めた上で、Bで勤務していたところ、本件出向命令は法的根拠がなく、個別的同意がないから無効であり、また人事権の濫用に当たるとして、出向命令の無効確認を請求したケースの控訴審で、一審と同様に、本件のように業務上の必要があるときには出向を命ずることがある旨の就業規則や労働協約及びそれに基づく詳細な出向協定が存在し、過去十数年の従業員が出向に服している実態、業務上の必要性、出向先の労働条件、出向の際の手続等を総合考慮して人事権の濫用事由を認めることはできないとして、本件出向は有効であるとして、Xの控訴が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法625条1項 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の根拠 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の限界 |
裁判年月日 | : | 2000年7月27日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ネ) 796 |
裁判結果 | : | 棄却(上告) |
出典 | : | 労働判例792号70頁 |
審級関係 | : | 一審/07501/神戸地/平12. 1.28/平成8年(ワ)1224号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の根拠〕 当裁判所も、控訴人らの本訴請求はいずれも失当であるから棄却すべきであると判断する。その理由は、次のとおり付加するほか、原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」の「一ないし三」(原判決31頁6行目から58頁末行まで)のとおりであるから、これを引用する。〔中略〕 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の根拠〕 本件出向のように、就業規則や労働協約において、業務上の必要があるときには出向を命ずることができる旨の規定があり、それらを受けて細則を定めた出向協定が存在し、しかも過去十数年にわたって相当数の被控訴人従業員らが出向命令に服しており、さらに控訴人らの属する労働組合による出向了承の機関決定もが存在する場合には、出向を命ずることが当該労働者との関係において、次のような人事権の濫用にわたると見うる事情がない限り、当該出向は法律上の正当性を具備する有効なものというべきである。 〔配転・出向・転籍・派遣-出向命令権の限界〕 使用者が出向を命ずる場合は、出向について相当の業務上の必要性がなければならないのはもちろん、出向先の労働条件が通勤事情等をも付随的に考慮して出向元のそれに比べて著しく劣悪なものとなるか否か、対象者の人選が合理性を有し妥当なものであるか否か、出向の際の手続に関する労使間の協定が遵守されているか否か等の諸点を総合考慮して、出向命令が人事権の濫用に当たると解されるときには、当該出向命令は無効というべきところ、前記(原判決「事実及び理由」の「第三 当裁判所の判断」の「二」)で認定した事実のもとでは、本件出向命令には、控訴人らの主張2ないし4を含む右の権利濫用事由を認めるに足りない。 |