ID番号 | : | 07603 |
事件名 | : | 解雇無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 八興運輸事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 大阪営業所でトレーラー等の運転手の業務に従事してきた労働者Xが、事業所の業務量の減少による収支の悪化に伴って人員整理の必要が生じたことを理由に二度にわたって発せられた宮崎県の営業所への転勤(三年間で勤務地手当三万五千円がカットされる)命令を拒否し、その後、開催された団体交渉において所属組合も右転勤を承諾しなかったところ、就業規則の規定(事業の縮小その他、事業の運営上やむを得ないとき解雇する)に基づいて解雇されたため、本件解雇は解雇回避努力等を欠き、被用者選定の合理性もないこと等を理由に解雇無効であるとして雇用契約上の地位にあることの確認及び賃金の支払を請求したケースで、本件配転命令は営業悪化の状態から人員整理の必要性があり、家族に影響が少ない者という観点からの人選方法も不合理ではないとして、本件解雇についても人員整理の必要性が認められ、その人選に不合理な点はないとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 業務命令違反 解雇(民事) / 解雇事由 / 已ムコトヲ得サル事由(民法628条) |
裁判年月日 | : | 2000年9月8日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成11年 (ワ) 7039 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1757号12頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕 〔解雇-解雇事由-業務命令違反〕 本件解雇は、営業所の経営改善の必要上行われた配転命令に原告が従わなかったため、解雇に至ったというものであるが、業務命令違反そのものを解雇事由とするものではなく、就業規則規定の解雇事由である「事業の運営上やむを得ないとき」に該当するものとしてされたものである。そこで、右規定に該当するかどうかを検討する。〔中略〕 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕 被告の大阪営業所においては、業務量の減少により、収支が悪化しており、年間一〇〇〇万円を超える欠損が生じる状態にあり、人員整理の必要があったものと認めることができる。そして、配転の人選について、家族に影響が少ない者という観点から原告を選定したことについても、これを不合理とする理由はない。そして、本件解雇が行われた平成一一年二月の段階においても、赤字幅は減少しているものの、収支状況が好転した訳ではなく、依然として年間一〇〇〇万円を超える収支状態にあり、しかも、トラックは六台であるのに、運転手は七名という人員過剰の状態となっていた。そして、解雇を行うについても、配転において原告が選定された事情に変化はないから、解雇の対象として原告が選定されたことに不合理はない。 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕 解雇回避努力としても、希望退職者の募集が行われ、配転も検討されており、被告としては、解雇回避努力を尽くしたものということができる。本件各配転命令は、就業規則に根拠を持ち、配転期間を二年ないし三年に限定したものであり、労働者の不利益を勘案しても、濫用といえるものではない。 原告は、人選が合理的でないともいうが、選定基準は、家族関係という労働者側の不利益を考慮したもので、独身で、世話を要する家族がいない唯一の原告を選定したことに不合理な点はない。 解雇に至る手続については、組合を通じて交渉することを避けたという点は認められるが、組合からの団体交渉申入れには応じているし、原告が組合に加入したのは、本件第一次配転命令の内示がされた後であり、配転の必要性などは、原告本人に説明されており、被告において、配転条件の譲歩も行っている。〔中略〕 〔解雇-解雇事由-已ムコトヲ得サル事由(民法628条)〕 以上を総合すれば、原告には、就業規則第三八条三号の「事業の運営上やむを得ないとき」に該当する事由があり、本件解雇を解雇権の濫用とする事由はない。 |