ID番号 | : | 07605 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 若松運輸・鉄構運輸事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 貨物自動車運送会社Y1及びY2(代表者及び事務所が同一)の運転手として勤務していた従業員X1ら六名が、全日本運輸一般労働組合東京地方本部地域支部X2に加入して分会を結成したところ、(1)Y1らは組合X2を含めて団体交渉を行うべきこと及びそのルールを作る旨の地労委のあっせん案を受諾したものの、その協議においては組合X2を排除しようとしたり、分会に対しても事実上団体交渉拒否につながるような条件を提示したり、団交時にも一方的に事項を限定したり、団体交渉を拒否するなどし、更に分会会員に対し組合脱退を働きかけ、(2)分会員に対して担当車両を持たせず頻繁に乗車車両を変更させ、運送業務以外の業務に従事する時間を多くするなどして賃金の減少に直結する取扱いをしたり、一時金の支給額を会社に白紙委任するような書面の提出を求め、それに応じなければ一時金を支給できないとし、(3)右不当労働行為に抗議する趣旨でなしたX1らによる役員宅周辺、抗議集会会場におけるビラ配布、従業員メールボックスへのビラ入れ、抗議デモに関する発言等が、就業規則の懲戒事由に該当するとして、出勤停止処分(二回~一一回、一一日から六五日)を行ったことから、(1)~(3)は不当労働行為であるとして、(一)X1らが、懲戒処分がなければ支払われたはずの賃金相当額の賠償の各支払及び懲戒処分の無効確認を、(二)組合X2が、不法行為に基づく慰謝料の支払を請求したケースで、いずれの行為も分会を嫌悪し、これを攻撃する意図でなされたことは明らかであり、労働組合法七条一号もしくは二号の不当労働行為に該当し、また右行為は長期に及び態様も悪質であること等から、社会的相当性の見地から著しく逸脱し、強度の違法性があるというべきであり、X1らに対して不法行為に基づく損害賠償責任があるとして、(一)については、不況の程度等を考慮してX1のY1らに対する損害賠償請求の七割及び無効確認請求が認容され、(二)については、組合X2のY1に対する慰謝料請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 労働組合法7条1号 労働組合法7条3号 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 |
裁判年月日 | : | 2000年9月13日 |
裁判所名 | : | 千葉地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 1603 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例795号15頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 本件懲戒処分は、いずれも就業規則上の懲戒事由に該当しないものであって、その処分の根拠を欠くといわざるを得ないところ、このように、正当な処分理由がないにもかかわらず、本件懲戒処分がなされたのは、被告らが、原告ら分会員を嫌悪し、これを攻撃する意図に出たものであることは容易に推認しうるし、それが組合員らに対する不利益な取扱いであることは明らかであるから、本件懲戒処分は、労働組合法七条一号の不当労働行為に該当するというべきである。 (七) 前記のように、本件懲戒処分は、就業規則上の懲戒事由に該当しないことが明らかであり、その処分の根拠を欠くものであること、このような懲戒処分がなされたのは、原告ら分会員を攻撃しようとする意図に出たものであり、組合員に対する不利益な取扱いとして不当労働行為を構成するものであることなどからすれば、本件懲戒処分は、およそ正当なものとは認め難いのであるから、無効であるというべきである。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 被告らの前記各行為は、分会が結成されたときから、原告組合及び分会を敵視して行われた一連の行為で、その期間も長期に及び、態様も執拗かつ悪質というべきである上、原告組合及び分会の主張を是認した地労委の救済命令等がなされたにもかかわらず、これを尊重し、遵守することもなかったとの事情を総合すると、社会的相当性の見地からも著しく逸脱し、強度の違法性があるというべきであるから、原告組合に対する不法行為を構成するというべきである。 したがって、被告らのうち被告Y1会社は(原告組合の請求は同被告に対してのみである。)、不法行為に基づき、原告組合が被った損害を賠償する責任がある。 (三) また、前記のとおり、原告ら分会員は、仕事・賃金上の差別や本件懲戒処分などの不当労働行為たる不利益取扱いによって、賃金及び手当の支給の面において多大な経済的不利益を被っているところ、右(二)のような被告らの行為の態様等をも考慮すれば、右不当労働行為は、原告ら分会員との関係においても、強度の違法性を有するものであり、不法行為を構成することは明らかである。 したがって、被告らは、不法行為に基づき、原告ら分会員が被った損害を賠償する責任がある。 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 前述のところからすれば、原告組合は、被告らによる前記不法行為により重大な無形の損害を被ったことは容易に推測されるところ、被告Y1会社の行った不法行為の性質や態様、分会員に与えた打撃、継続期間等本件に顕れた一切の事情に鑑みれば、原告組合に対する慰謝料は三〇〇万円が相当である。 |