全 情 報

ID番号 07614
事件名 執行スペース立入禁止仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 三井物産事件
争点
事案概要  A会社と共有するビルの一部を支社の部署として使用管理していた会社Xが、従業員Yが再三の厳重注意等にもかかわらず業務命令を拒否したり、私用電話等の利用に問題があったため、配置転換命令や退職勧奨を行ったが、Yに拒否されたため、就業規則の規定に基づき解雇したが、その後、Yは出勤と称して出社時刻から退社時刻まで読書するなどしてXの打ち合わせ場所を占拠したため、警備員を配置して右執務場所内への立入りを禁止し、重ね重ね警告書等で即時退去を要求したが、Yは連日同様の行為を繰り返したため、Xが執務室への立入り禁止の仮処分申立てしたケースで、YはXが拒絶しているにもかかわらず、打合わせ場所を占拠するなどしているのであるから、XはYに対し、企業施設の占有管理権に基づき、右執務場所に立ち入らないように求める権利を有し、保全の必要性も認められるとして、請求が認容された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法623条
体系項目 解雇(民事) / 解雇と争訟・付調停
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 就労請求権・就労妨害禁止
裁判年月日 2000年9月29日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成12年 (ヨ) 10079 
裁判結果 認容
出典 労経速報1757号18頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇と争訟〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-就労請求権・就労妨害禁止〕
 本件解雇は、右認定のとおり、就業規則等に定める手続をも履践したうえでなされており、主たる解雇理由とされた事実も概ね認めることができるのであってその意思表示にはこれを不存在又は明白に無効と認めなければならないような重大な瑕疵は認められず、一応は適法というべきであるし、債権者は、その後も、債務者の立入りに対し再三退去を求めるなどしているのであるから、債権者が債務者の提供する労務の受領を拒否していることは明らかである。これに対し、債務者は本件解雇の不当性を縷々主張するなどしてその効力を争っているが、本件解雇の有効性に関する紛争は、別途、地位確認ないし賃金請求の訴えを提起するなどして解決すべきであり、債権者及び債務者間の労働契約には債務者の就労請求権を肯定すべき特段の定めや事情は認められず、したがって、債務者は自ら提供する労務の受領を債権者に強いることはできないのであって、右の明示の拒絶に反して債権者の企業施設に立ち入ることは許されないというほかない。
 にもかかわらず、債務者は、債権者の拒絶を無視して、審査部や業務部の執務場所に立ち入り、打ち合わせ場所を占拠するなどしているのであるから、右債務者の立入りは違法であり、債権者は、債務者に対し、企業施設の占有管理権に基づき、右執務場所に立ち入らないよう求める権利を有するというべきである。