全 情 報

ID番号 07616
事件名 地位確認等請求事件
いわゆる事件名 南明興産事件
争点
事案概要  会社Yが警備業務等の依託を受けた火力発電所内の警備業務に従事していた労働者Xが、職業安定所の求人票及び採用試験の際にYから配布された説明資料には「雇用期間は一年更新」とする旨の記載があったが、採用内定の通知直後に、Yの業務上の都合により、再就職が最も容易であると考えられたXの雇用期間を短縮する旨の決定がなされ、Yから三か月を雇用期間とする内容の辞令が交付されるとともに事情の説明がなされ、了承を求められたが、これを拒否し、その後も話合いはまとまらなかったところ、Yから三か月の期間満了の一か月前に契約終了の通知がなされ、その後、仮に本件雇用契約が期間満了により終了していないとしても、Xは業務を同僚に任せて休憩室で休むことが多くあり、同僚に対して罵声を浴びせたり、業務を委託した会社から苦情が出ることなど問題があったことを理由に、就業規則の規定に基づいて三〇日の予告期間を置いて解雇の意思表示がなされたため、本件雇用契約の期間は一年であるとして、九か月分の未払賃金の支払を請求したケースで、雇用契約を一年とする旨の合意がその後に変更される特段の事情はなく、雇用契約の期間は一年であるが、Xは警備員としての不適格であり、就業規則の解雇事由に該当するとして、期間満了前になされた本件解雇は有効であり、解雇予告三〇日後に、本件雇用契約は終了したものとして、請求が一部(三か月経過から解雇による雇用契約終了までの賃金の支払)認容された事例。
参照法条 労働基準法14条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度
裁判年月日 2000年10月13日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ワ) 8077 
裁判結果 一部認容、一部棄却
出典 労経速報1748号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 原告と同時期に採用された契約社員の雇用期間は、いずれも一年とされていた。
 以上の事実関係の下では、同年三月二九日に成立した、本件雇用契約の期間を一年とする旨の原、被告間の合意がその後に変更されるなどの特段の事情を認めることはできないから、本件雇用契約の期間は一年(平成一一年四月一日から平成一二年三月三一日まで)とされたものであって、これを三か月とする被告主張は採用することができないものというべきである。
〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕
 原告は、同僚社員間の弁当の片付け当番に当たっていたのに当番の仕事をしようとしないので、見かねた年長の同僚社員が注意したところ、これを根に持った原告は、その後、来訪者から回収した入門許可証や構内通行証を右同僚社員が座っていた受付の机に叩きつける行為を数回繰り返したあげく、右同僚社員からこのことを注意されると、激しく興奮して、「一体お前は何なんだ」、「何様のつもりだ」、「いいかげんにしろ、馬鹿野郎」などと、聞くに堪えないような罵声を浴びせかけた。
 また、原告は、所属班の責任者に対して本件就業規則のコピーを希望した際、担当者に相談するように指示されたことに腹を立て、右責任者に対し、「お前は自分が長く契約するために俺を陥れているだろう」、「馬鹿野郎」などと、罵声を浴びせ、「頭が痛い」などと叫んで休憩室に引きこもるまで、長い間これを止めようとしなかった。
 (五) 原告は、警備室の受付で勤務中、誰も会話している者がいないときでも、突然大声で、「ついてない」、「失敗した」、「きつい」などと、何の脈絡もない独り言を叫んで同室で待機中の他の警備員を驚かせ、気味の悪い思いをさせるということがしばしばあった。
 (六) 原告は、警備室の受付で勤務中、消しゴムに被告本社社員の名前を書き、鉛筆で繰り返しその箇所を突つき、所属班の責任者が会社の備品であるから止めるよう注意しても改めなかった。また、原告は、警備室付近にあるA会社の植込みの添え木を蹴り付けているところを同会社の社員に見つかり、千葉事業所防災センター所長が同会社の担当部署の社員に謝罪するということがあった。
 2 以上認定の原告の言動に照らすと、原告が従事していた業務が、電力会社が設置運営する火力発電所という公共の安全に極めて重要な影響のある事業所の警備業務であることにかんがみ、原告には、右警備業務を遂行する上での適格性が著しく欠けているといわざるを得ず、本件就業規則一〇条七号にいう「その他契約社員を解雇するに足る重大な事由」があるものと認めることができるから、三〇日の予告期間を置いてされた本件解雇の意思表示により、本件雇用契約は、平成一一年八月六日をもって終了したものというべきである。