全 情 報

ID番号 07619
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 東日本電信電話事件
争点
事案概要  当時ハローダイヤル業務に所属していた元従業員(以前はフリーダイヤル業務等に従事していたこともあった)が、(1)パソコン操作の誤りで業務に支障を来したことを理由にパソコン操作業務を外されたこと、(2)会社に無断で業務内容そのものに関するアンケートを独断で実施しようとしたことを理由に、フリーダイヤル業務から外されたことから、右業務命令とそれに伴う事実上の指示が、職務上何ら合理性もなく、雇用契約上許容される業務命令権行使の合理的限度を逸脱し、人格権を侵害する違法な行為であるとして、不法行為責任に基づく慰謝料の支払を請求したケースで、本件業務命令は、違法、不当な目的でなされたものではないとして、請求が棄却された事例。
参照法条 民法709条
労働基準法2章
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 業務命令
裁判年月日 2000年11月14日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (ワ) 25224 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1756号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-業務命令〕
 職場において、脱退被告が社員にどのような業務命令を行うかについては、その性質上原則として脱退被告の裁量的判断に委ねられているものというべきであるが、その内容が不合理なものであったり、社員の人格権を不当に侵害する態様のものである場合には、その業務命令は脱退被告の裁量の範囲を逸脱又は濫用し、社員の人格権を侵害するものとして、不法行為に該当するものというべきであるが、右裁量の逸脱、濫用の有無は、当該業務命令に至った経緯、目的、その態様等諸般の事情を考慮して判断すべきものと解するのが相当である。
 そこでこれを本件についてみるに、原告がフリーダイヤル担当当時に、前記一認定のとおりの経緯で、パソコン業務から外され、さらに会社に無断で業務内容そのものに関するアンケートを独断で実施しようとしたことから、当該業務を行う職場の秩序を維持するため、フリーダイヤル業務から外されたことについては、いずれも職場秩序を維持し、職場全体としての業務の円滑な処理を確保するために必要な、職場管理上やむを得ない措置であったものと認められ、右は懲戒処分に該当するものでもなく、業務指示の内容等からしても、社会通念上相当な程度を超える過酷なものであるということはできないというべきである。
 また、原告のハローダイヤル担当当時には、前記認定のとおり、脱退被告における原告の上司らは、原告の希望に沿う企画業務を担当させていたものであり、原告の主張するごとき違法な業務外しがされた事実を認めるに足りる証拠はない。
 結局、脱退被告の原告の上司らが原告に対して行ってきた前記認定のとおりの各業務上の指示が、正当性を欠くものであるということはできず、これらの業務上の指示が、ことさらに原告に対して不利益を課するためにされたという違法、不当な目的でされたものであるとも認められないのであって、本件において、原告の上司らが原告に対して行った業務命令が違法なものであると認めることはできないというべきである。