全 情 報

ID番号 07623
事件名 罷免処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 工業所有権協力センター事件
争点
事案概要  定年退職後、退職前に勤務していた出向先の会社Yと期間を一年とする嘱託員雇用契約を締結し、グループサブリーダーに任用されていた労働者(二回目の契約締結直前に組合の書記長となっている)が、業務遂行において審査担当官への対応が不適切であったり、指示にすぐに従わないなど、自らの立場に固執し相手の意見等に柔軟に耳を傾ける姿勢が欠けていることなどから、適格性なしとして、二回目の契約期間中にグループサブリーダーの職を罷免され、三回目の契約期間中も主席部員のままにとどまっていたため、手当が二万円減額したことから、(1)本件罷免処分は合理的な理由のない労働契約の変更であり、また不当労働行為である等として、無効であることの確認及び未払の職務手当差額分の支払を請求するとともに、(2)右罷免処分及びグループサブリーダーとする嘱託員雇用契約を締結しなかったことが不法行為に当たるとして損害賠償及び慰謝料の支払を請求したケースで、(1)及び(2)について、本件罷免処分はYの裁量権の濫用ないし逸脱を認めることができず、正当な人事権の行使の範囲内であり、不当労働行為にも当たらないとして請求が棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法623条
体系項目 労働契約(民事) / 人事権 / 降格
裁判年月日 2000年12月8日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 1323 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1757号22頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔労働契約-人事権-降格〕
 グループサブリーダーは、被告の組織規程上役職職員であり(書証略)、その任免には辞令の交付が行われており、原告の場合、任用も本件罷免処分もいずれも嘱託員雇用契約の期間中に行われており(前記一2)、その任免の際に別途雇用契約書等の合意書面を作成してはいない。
 このことからすると、原告と被告との雇用契約は主席部員としての嘱託員雇用契約というべきでグループサブリーダーの地位を特定して締結されたものではないというべきである。そして、グループサブリーダーの任免は、被告の組織上の役職職員の任免であるから、被告の人事権の行使として行われることであり、人事権の行使は、基本的に被告の裁量判断に属し、社会通念上著しく妥当性を欠き、権利の濫用に当たると認められない限り違法とはならないものと解されるが、使用者に委ねられた裁量判断を逸脱しているか否かを判断するに当たっては、使用者側における業務上・組織上の必要性の有無及びその程度、能力・適性の欠如等の労働者側における帰責性の有無及びその程度、労働者の受ける不利益の性質及びその程度、当該企業体における運用状況等の事情を総合考慮しなければならない。〔中略〕
〔労働契約-人事権-降格〕
 右の審査担当官や主幹に対する対応からすると、原告は自らの立場に固執し、相手の意見等に柔軟に耳を傾ける姿勢が欠けているといわざるを得ず、グループサブリーダーの職務が主幹の命を受けたグループリーダーが行うグループ内の連絡調整業務を補佐することにあり、しかも多数の企業からの出身者で構成される主席部員間の調整は極めて重要なことであること(前記一1)からすれば、原告にその適格性がないとした被告の判断が不合理であるとはいえない。特に、原告の考えが誤りとはいえないと考えつつも、A主幹の相談に応じて、A主幹と原告との間の調整を図ったBグループリーダーの業務遂行状況(前記一4(二)(1))などに照らしても、被告が、原告の右のような態度をして、グループサブリーダーとして適格性を欠くと判断したのもやむを得ないところであるというべきである。〔中略〕
〔労働契約-人事権-降格〕
 本件罷免処分には、被告の裁量権の濫用ないし逸脱を認めることはできず、正当な人事権の行使の範囲内ということができ、また、不当労働行為にも当たらないから、本件罷免処分は有効である。〔中略〕