ID番号 | : | 07637 |
事件名 | : | 雇傭関係存続確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 芝山タクシー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | タクシー業を主たる業とする有限会社Yにエアポート勤務のタクシー運転手として勤務したXが、タクシー乗務員としての売上げは平均を下回ることがなかったものの、営業車をガードレールに接触させるなど同種の事故を連続的に四回起こしたことがあり、また硬変や糖尿病の治療のために服用していた薬は脱力感、精神錯乱、ふらつき等タクシー運転手にとっては危険な副作用を有するものであったところ、その事故の多さから従業員の適性を著しく欠くとの理由で解雇されたことから、本件解雇はY主張の解雇理由が認められず、また不当労働行為に該当し無効であるとして、雇用契約上の地位確認及び賃金支払を請求したケースで、本件事故はXの病状、薬の有する副作用等からすれば、いずれも正常な運転ができない状態に陥ったために発生したものであり、タクシー乗務員、特にエアポート勤務乗務員としての適性を欠くと認められるとして、本件解雇は正当な理由があり解雇権の濫用とはいえず、またXが労働組合員であることが本件解雇の決定的動機であるとまでは認められず、不当労働行為にも該当しないとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項3号 労働組合法7条1項1号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 従業員としての適性・適格性 |
裁判年月日 | : | 1999年9月29日 |
裁判所名 | : | 千葉地八日市場支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 51 |
裁判結果 | : | 請求棄却(確定) |
出典 | : | タイムズ1064号161頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-従業員としての適性・適格性〕 原告が、肝硬変、糖尿病の持病を有することは当事者間に争いがない。 そこで、原告の肝硬変の病状について検討すると、前第一認定の原告の肝炎並びに肝硬変の発症時期、マニラに旅行中倒れた経緯、平成七年の欠勤状況、服用薬等に鑑みると、非代償期にあると認めざるを得ないのであって、肝硬変としては相当病状が進行しているものと断ぜざるを得ない。 また、原告は、肝硬変と糖尿病を併発していることによって、アンモニア高値、血糖高値になると意識混濁や糖尿病性昏酔に陥る可能性があるものである。〔中略〕 更に、問題になるのは、原告には、肝硬変、糖尿病の症状以上に、その治療のために服用する薬の重大な副作用の危険性があることである。前記のとおり、原告が服用していた薬の中には、脱力感、眩暈、精神錯乱、ふらつき、眠気等タクシー運転手にとっては危険な副作用を有するものがあり、これらの薬を常用しながら激務であるエアポート勤務に従事すると運転中に薬の副作用による症状が発生する可能性があり、その場合には、本件第一ないし第四事故と同種の事故を再発する危険性がある。 そうすると、原告の病状、服用薬のどちらをとってみても、原告が被告のタクシー乗務員として特にエアポート勤務に従事するのは、旅客にとっても、原告本人にとっても極めて危険な憂慮すべき事態である。〔中略〕 本件第一ないし第四事故は、いずれも路外に逸走したうえでの自損事故という共通点を有するもので、空車状態で発生したこともあって、結果的に大事には至らなかったものの、特に本件第一、第二事故は重大な結果を招来する危険性もあったものである。これらの事故は、前記原告の病状、薬の有する副作用、同種の事故が連続的に発生したこと等からすれば、いずれも原告が正常な運転ができない状態に陥ったために発生した事故と認めざるを得ない。 3 (まとめ) してみれば、原告は、その病状、服用している薬の副作用により、運転中に何らかの正常な運転ができない状態に陥る可能性があると認められるから、タクシー乗務員、特に被告のエアポート勤務乗務員としての適性を欠くと認められるので、被告が「原告が従業員としての適性を著しく欠く」として原告を解雇した本件解雇には正当な理由があり、解雇権の濫用とはいえない。〔中略〕 前述のとおり、本件解雇には正当な理由があり、特に原告の病状、薬の副作用、事故が連続したこと等に鑑みれば、原告が労働組合員であることが本件解雇の決定的動機であるとまでは認められないから、解雇の手続に右のような疑問があることを考慮しても、原告が労働組合員であることをもって不当に差別的待遇をしたとはいえないので、本件解雇は不当労働行為には該当しない。〔中略〕 |