ID番号 | : | 07647 |
事件名 | : | 不当労働行為救済命令取消請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 中労委(JR東京総合病院)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 国鉄直営の中央鉄道病院の眼科で視能訓練士(医療職)(なお、民営化直前の命令により事務部医事課職員視能訓練士兼務とされた)として勤務していたA(国労分会長)が、国鉄の分割・民営化後、JR東日本株式会社Xから病歴管理業務(事務職)への配転を命じられたことから、国労東京地方本部・中央支部、同支部東京総合病院分会(補助参加人)らが、本件配転命令は組合活動等を理由とする不当労働行為に該当するとして東京地労委に救済申立てしたところ、Aを元の職場に復帰させる旨の救済命令が出され、再審査においても、中労委Yは初審命令をほぼ維持したことから、XがYに対し、右救済命令の取消しを請求したケースの控訴審(原審X勝訴・Y控訴)で、本件配転命令は、正当な業務上の必要性(過員となっている視能訓練士の問題解消、医学的知識を有する専任社員の配置による病歴管理業務の充実等)及び人選の合理性が十分に是認することができ、住居及び勤務地の移転や給与上の不利益を伴わない本件配転命令により分会役員としての組合活動に具体的な支障が生じたとはいえず、その他諸般の事情を斟酌しても、Aの組合活動が本件配転命令の決定的動機であったと認めることができず、本件配転命令は不当労働行為に該当しないとして、本件救済命令を違法とした原審の判断を相当として、Yの控訴が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 |
裁判年月日 | : | 2000年4月18日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (行コ) 113 |
裁判結果 | : | 控訴棄却(上告) |
出典 | : | 時報1728号130頁/労働判例798号57頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地/平10. 5.21/平成8年(行ウ)45号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕 当裁判所も、本件配転命令は不当労働行為に該当するものではなく、本件命令は違法であって取消しを免れないと判断するものであり、その理由は、次のように原判決について訂正、付加をし、〔中略〕原判決〔中略〕の説示と同一であるから、これを引用する。〔中略〕 前示のとおり昭和60年4月実施の合理化に伴う定数の削減以来過員となっていた視能訓練士について名実ともに過員の解消を図る一方で、医学的知識を有する専任社員の配置による病歴管理業務の充実を図るために行われた本件配転命令は、正当な業務上の必要性に基づいて行われたものと認めるのが相当であるというべきである。〔中略〕 本件配転命令の決定に当たって、本件病院としては、(ア)平成元年4月当時の慢性的な看護婦不足の状況の下で、看護婦資格を有しているBを眼科に残しておくことにより、状況に応じてBに視能訓練士と看護婦の両方の役割を果たしてもらうことが期待できること、(イ)総合病院である本件病院においては、他の疾病を有する患者が眼科の診察を受けることも珍しくなく、眼科において応急措置が必要となるなど、眼科内において事務が輻輳したときは、看護婦資格を有する者の存在が重要な意味を持つことを考慮したことが認められ、右認定の事実に照らすと、Bが視能訓練士の資格とともに看護婦の資格を有していたことは、本件配転命令の人選の合理性を基礎付ける事情であると解するのが相当である。〔中略〕 以上のとおり本件配転命令自体について業務上の必要性及び人選の合理性を十分に肯認することができる上、前示のとおり、本件配転命令前の被控訴人と国労分会との労使関係、Aの分会役員としての活動状況等の背景事情に係る前記認定の諸事実を斟酌してもなお、本件配転命令自体の業務上の必要性及び人選の合理性、住居及び勤務地の移転も給与上の不利益も伴わない本件配転命令により分会役員としての組合活動に具体的な支障が生じたとはいえず、当時の被控訴人が置かれていた人事配置の適正化という困難な状況の下において、本件配転命令がAに対し著しい不利益を負わせるものと評価することはできないこと、その他視能訓練士の定員削減に関する労使合意の存在、簡易苦情処理会議における労使一致の申告却下決定等の諸般の事情を総合考慮すると、Aの組合活動が本件配転命令の決定的動機であったものと認めることはできず、また、当該組合活動がなければ本件配転命令がされなかったものと認めることはできないというべきであり、本件配転命令を不当労働行為に間擬する控訴人の右主張は、理由がないものであるといわざるを得ない。〔中略〕 以上認定のとおり、本件配転命令については業務上の必要性及び人選の合理性を十分に肯認することができる上、住居及び勤務地の移転や給与上の不利益を伴わない本件配転命令により分会役員としての組合活動に具体的な支障が生じたとはいえず、当時の被控訴人が置かれていた人事配置の適正化という困難な状況の下において、本件配転命令がAに対し著しい不利益を負わせるものと評価することはできないこと、その他視能訓練士の定員削減に関する労使合意の存在、簡易苦情処理会議における労使一致の申告却下決定等の諸般の事情を総合考慮すると、本件配転命令前の被控訴人と国労分会との労使関係やAの分会役員としての活動状況等の背景事情に係る諸事実を斟酌してもなお、Aの組合活動が本件配転命令の決定的動機であったものと認めることはできず、また、当該組合活動がなければ本件配転命令がされなかったものと認めることはできないというべきであり、本件配転命令が不当労働行為(労働組合法7条1号の不利益取扱いないし同条3号の支配介入)に該当する旨の控訴人補助参加人らの右主張を採用することはできないものといわざるを得ない。 |