ID番号 | : | 07651 |
事件名 | : | 公務外認定処分取消請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 地公災基金東京都支部長(高輪消防署)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 消防署総務課管理係で庶務・福利厚生事務として、ワープロ浄書事務、接遇、湯茶接待等の業務に従事していた女性職員Aが、消防署内で勤務し昼食のために外出したところ路上で倒れて意識不明となり、搬送後の病院で死亡(致死的不整脈(心室細動)の発症により死亡)したため、Aの夫Xが、Aの死亡を公務上のものとして地方公務員災害補償基金東京都支部長Yに対し地方公務員災害補償法に基づき公務災害の認定請求したが、公務外災害の認定処分がなされたことから、右処分の取消しを請求したケースで、Aは死亡約五カ月前から、転居に伴う通勤時間増加に伴い、従前に比して時間的余裕が大幅に減少し、そのような中で仕事量も相当増加していたことから、限られた所定労働時間内に従前よりも増えた事務を処理しなければならなかったこと、また家事・子の養育についても忙しい中で密度濃く取組んでいたため、その心身の負担は増加し、死亡約一ヶ月半前からは相当程度のものとなっていたことからすれば、通勤時間の増加・職務の負担増の事情はいずれもAの死亡との間に条件関係があるとしたが、Aの従事していた公務に内在する危険が現実化した結果、致死的不整脈が発症したものと認めるには足りず、Aの公務と本件災害との間に相当因果関係を認めることはできないとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 地方公務員災害補償法45条1項 |
体系項目 | : | 労災補償・労災保険 / 業務上・外認定 / 脳・心疾患等 |
裁判年月日 | : | 2000年5月17日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成7年 (行ウ) 109 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 労働判例799号51頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 保原喜志夫・月刊ろうさい52巻7号4~7頁2001年7月 |
判決理由 | : | 〔労災補償・労災保険-業務上・外認定-脳・心疾患等〕 Aは、昭和63年4月以降、前記のような通勤時間増加の事情から従前に比して時間的余裕が大幅に減少し、そういう中で前記のとおり仕事量も相当増加していたから、限られた所定労働時間内に従前よりも増えた事務を処理しなければならず、また、家事及び子の養育についても忙しい中で密度濃く取り組んでいたのであるから、その心身の負担は増加し、殊に同年7月下旬からは相当程度のものとなったことが認められる。右1の事実に基づいて考えると、右に述べた通勤時間増加の事情もAの従事していた職務の負担増も、いずれもその事実だけでは致死的不整脈を発症させるに足りないが、相互に他の要因と相まってAに致死的不整脈を発症させたものというべきである。したがって、右各事情はいずれもその死亡との間に条件関係がある。〔中略〕 Aの従事していた公務と死亡との間に条件関係があること自体は否定できない。しかし、前記のとおり、Aの従事していた職務の負担増だけでは致死的不整脈を発症させるに足りず、Aの通勤の負担増と相まってはじめて致死的不整脈を発症させたのであり、しかもAの通勤の負担増の方が比重が大きいものというべきである。前記のような通勤時間増加の事情は慣れればさほど大きな負担となるものではなく、それだけではAに致死的不整脈を発症させるだけの危険を内在しているものではなかった。このことに照らして考えると、Aの従事していた公務に内在する危険が現実化した結果致死的不整脈が発症したものと認めるには足りないというほかはない。 結局、Aの従事していた公務と本件災害(死亡)との間に相当因果関係を認めることはできない。 |