ID番号 | : | 07653 |
事件名 | : | 組合員地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 関西職別労供労働組合(除名)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 職業安定法四五条に基づき労働大臣の許可を得て無料の労働者供給事業を行っている自動車運転手で組織する労働組合Yの支部から日々雇用主の斡旋を受けていた組合員X1は斡旋先で事故を起こした場合には報告することとなっているにもかかわらず、これを報告せず、勤務態度に問題があり出入禁止となった事業所が多かったことを理由にYから除名処分を受け、また組合員X2は、X1の右処分に不服を持ち、X1とともにY本部に右処分の撤回を申し入れた際に委員長に対してなした発言の撤回と謝罪の要請を拒否したことから、三日間の就労停止及び謝罪文の提出を命じられたが、結局謝罪文を提出しなかったため、権利停止処分後、除名処分にされたことから、Xらが、右除名処分は無効であると主張して、Yの組合員としての権利を有する地位にあることの確認及びYの仕事の斡旋拒否に対する損害賠償の支払を請求したケースで、X1及びX2に対する処分は、Yの労働組合としての自主性を尊重したとしても、なお過酷に過ぎるというべきであるとして、組合員たる権利を有する地位確認請求が認容されたが、Yの斡旋拒否がなかったとしてもXが当然に一定額の収入をもたらす事業所で稼動するなどして従前と同水準の収入を維持できたとは推認できないなどとして、損害賠償請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 職業安定法45条 民法709条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 労働組合の労働者供給事業 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2000年5月31日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 11221 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例811号80頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣-労働組合の労働者供給事業〕 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 原告らは、無効な本件各処分のために、就労先の斡旋を受けられなくなり、その結果、従前稼動して得てきた賃金相当額の損害を被ったと主張して、組合規約違反あるいは不法行為を理由に右損害の賠償を請求するが、証拠(〈証拠・人証略〉)及び弁論の全趣旨によれば、被告は労働者供給の申込みをしてきた事業所と労働者供給契約を締結し、原告ら組合員にこれら労働者供給契約を締結した事業所を就労先として無料で斡旋するだけであって、雇用契約自体は、各組合員と各事業所との間で締結され、賃金も就労先の事業所から各組合員に支給されるものであること、したがって、供給先事業所の需要や事業所によっては特定組合員の就労を拒否すること(出入禁止)などから、組合員は希望する事業所で自由に就労できるものではないこと、組合員は被告を経由することなく自ら事業所と交渉するなどして雇用されることは何らの妨げを受けないこと、原告らは本件各処分後タクシー運転手として稼動し収入を得ていること、組合規約上、被告が原告ら組合員に対し、一定の収入を獲得し得る仕事を斡旋すべきことを規定した条項や一定の収入を補償することを規定した条項は存しないことが認められ、右認定事実によれば、本件各処分がなかったとしても、原告らが当然に一定額の収入をもたらす事業所で稼動するなどして従前と同水準の収入を維持できたとは推認できず、したがって、本件各処分によって、原告ら主張の損害が生じているとは認められないし、また、原告らの就労の機会が事実上減少し、その結果賃金収入に影響を及ぼした部分があったとしても、当該減少部分は特定できない。 よって、損害賠償の支払を求める原告らの請求は、いずれも理由がない。 |