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ID番号 07672
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 奈良県立医科大学事件
争点
事案概要  Y1県立医科大学の助手に採用され、公衆衛生学教室に勤務している女性Xが、同教室の主任教授の退職に伴い、公募・選考の結果、Y2が後任教授に決定され、Xの直属の上司になったところ、Y2の選考をめぐり、Xを中心とする助手・講師有志が選考委員長に対し、再公募等を求める要望書を提出するなどし、Y2就任後もY2を一人前の教授として扱わないような態度をとっていたこともあって、XY間に確執が生じていたところ、Y2から教室主任たる地位、権限を濫用、越権した数々の嫌がらせ(アカデミック・ハラスメント)を受け、その人格的利益を侵害されたとして、〔1〕Y2に対し、不法行為に基づき、〔2〕Y1県に対し、国家賠償法一条に基づき(さらに、Xの雇用者として働きやすい職場環境を提供すべき雇用契約上の義務があるにもかかわらず、それを尽くさなかったとして、債務不履行に基づき)それぞれ精神損害及び弁護士費用の賠償を請求したケースで、Xの主張のうちYの一部の行為につき違法性を認めたうえで(他大学への兼業の承認書類に押印しなかった兼業妨害、Xの私物をXの了承なくダンボールに入れて移動させたこと、他大学の応募を勧めるメモを置いたこと等)、〔1〕については、国家賠償法一条一項の文言等に照らせば、当該違法行為を行った公務員個人に責任を負担させるものではないとして、請求が棄却、〔2〕については、Y1県は、Y2が職務上行った違法な行為につき国家賠償法に基づく損害賠償責任を負う(債務不履行責任に基づく請求については棄却)として、請求が一部認容された事例(五五〇万円のうち五〇万円のみ認容)。
参照法条 国家賠償法1条
男女雇用機会均等法21条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント
裁判年月日 2000年10月11日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 2808 
裁判結果 一部認容、一部棄却(控訴)
出典 時報1737号66頁/労働判例799号23頁
審級関係
評釈論文 信澤久美子・判例地方自治223号97~99頁2002年4月
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-セクシャル・ハラスメント、アカデミック・ハラスメント〕
 原告の被告Y1県に対する請求のうち、被告Y2等の職務行為を理由とする国家賠償請求については、被告Y1県が被告Y2の違法行為について賠償責任を負うものであるところ、国家賠償法1条1項の文言等に照らせば、当該違法行為を行った公務員個人に責任を負担させるものではないと解するのが相当である。
 従って、原告の被告Y2に対する請求は理由がない。〔中略〕
 被告Y2の前記認定の違法行為は、比較的長期間にわたりなされたものであるが、その程度は、原告の研究に具体的に支障を与えるようなものではなかったし、被告Y2が前記認定のような嫌がらせ行為を行うに至るまでには、原告が先に嫌がらせというべき行為を仕掛けたり、また、教室会議で決まり、また、公務員として当然に要求される欠勤や休暇についての手続を、独自の研究に関する考え方に固執して、これを遵守しなかったことに起因するところもあるところ、これら被告Y2の前記違法行為の内容、各違法行為に至るまでの原告の対応等本件における諸般の事情を考慮し、原告の精神的苦痛に対する賠償としては、50万円をもって相当と思料する。