ID番号 | : | 07676 |
事件名 | : | 解雇無効確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | アラコム事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 従業員約九〇〇名のうち登録社員二六〇名のほぼ全員が警備員で構成されている株式会社Yに登録社員として採用され、一年以内の期間の定めのある雇用契約を締結後、勤務場所を限定した雇用契約を更新してきたXが、さらに大企業Aを勤務場所として期間を一年とする雇用契約(第一契約)に基づき警備員として勤務していたが、顧客(一般企業及び都立高校)から勤務態度に問題があるとの指摘を受けるなど、警備員としての勤務態度、言動に問題があったことを理由に期間途中に第一契約につき解雇する旨の意思表示がなされ、その直後に、Yとの間で、勤務態度が問題になりにくい馬券売場を勤務場所とし、期間を約三カ月とする雇用契約(第二契約)を締結して警備勤務についていたが、期間満了により第二契約は終了されたところ(この間、Xは顧客先がYにXの勤務態度につき改善を申し入れたことが不法行為に該当するとして顧客の職員個人に対し損害賠償請求を提起している)、Xは期間満了後も二日間勤務を継続し、給与の支払を受けていたことから、〔1〕Aを勤務場所とする第一契約解除が無効であることの確認、また〔2〕第二契約は更新されており、その後不当に解雇されたと主張するとともに、正社員と同等の仕事をしているとしてYの正社員として同等の地位を有することの確認、〔3〕Xが被った精神的損害に対する慰謝料の支払を請求したケースで、〔1〕第一契約解除については、XはYの従業員としてふさわしくない場合(就業規則所定の解雇事由)に該当し、本件解雇は止むを得ない事由に基づくものであり、有効であるとし、〔2〕第二契約についても、右期間満了により終了する旨の通知は雇止めに該当し、第二契約が更新されたと認めることができないとしたうえで、第二契約の更新を拒絶した本件雇止めには社会通念上合理的な理由があり有効であるとし、請求が全て棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法14条 労働基準法2章 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) 解雇(民事) / 解雇事由 / 従業員としての適性・適格性 |
裁判年月日 | : | 2000年11月14日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ワ) 26126 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1760号20頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-従業員としての適性・適格性〕 本件第一契約に基づき原告が従事していた業務は、被告が顧客先会社のAから受託した警備業務であり、その業務内容は、複数の警備員で日中多数の来訪者のある大企業の警備を行い、不審者及び不審物の侵入を防ぐとともに、他面では、来訪者に対する対応・接遇をも伴うものであり、右業務全体が安定的かつ確実に遂行されるためには、個々の警備員が隊長の業務指示に従い、警備員相互においても円滑な意思疎通及び信頼関係を保持することが不可欠であるものと認められる。このような事情に照らせば、前記一5(一)ないし(四)に認定した原告の言動を総合すると、被告が、原告にはA分駐所の警備業務を行うことの適格性が欠けると判断したことは相当といわざるを得ず、原告の前記認定の各言動は、原告の勤務状況が悪く、被告会社従業員としてふさわしくない場合に該当し、本件解雇はやむを得ない事由に基づくものと認められる。〔中略〕 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 本件第二契約は、平成一〇年四月一六日から平成一一年四月一五日までを契約期間とするものであるが、前記一10認定のとおり、被告のYは、平成一一年四月一五日をもって本件第二契約の期間が満了する旨の同年三月一五日付けの通知書を作成し、同日右通知書を原告に交付したものであり、これは、期間の定めのある本件第二契約の更新を拒絶した雇止めに該当するというべきである(以下「本件雇止め」という)。〔中略〕 原告は、昭和六〇年から被告の登録社員として採用され、その後継続して警備員として勤務し、被告との期間雇用契約が反復更新されている(ただし、前記前提となる事実欄記載のとおり契約が間断なく継続しているまでの状態ではなく、途中に契約が中断した期間も含まれている)事実関係からすれば、被告は合理的な理由がない限り、原告との間で登録社員としての期間雇用契約の更新を拒絶することは許されないものと認められる。 (三) そこで、本件において被告が原告との登録社員としての雇用契約の更新を拒絶した本件雇止めがやむを得ないと認められる合理的な理由が存在するか否かについて見るに、前記認定事実のとおり、原告は、警備員として勤務した都立高校及び一般企業のいずれにおいても勤務態度に問題があるとの指摘を受け、被告はやむなく原告との間で接遇等の勤務態度が問題になりにくい場外馬券売場の警備業務に就かせたが、原告は、本件第二契約締結後の平成一〇年四月二八日に、被告の顧客先が警備員としての原告の勤務態度につき被告に改善を申し入れたことが不法行為であるとする損害賠償請求の訴えを被告の顧客の職員個人に対し提起したものであり、被告が、これら原告の従前の勤務態度、本件解雇後に原告を後楽園場外馬券売場の勤務とした経緯及び被告に警備業務を委託した顧客であれば要求することが当然ともいえる警備員の勤務態度の改善要求自体を不当であるとして顧客職員に対し訴訟を提起したこと等を総合考慮し、本件第二契約の更新を拒絶した本件雇止めについては、社会通念上合理的な理由があると認めるのが相当というべきである。 (四) したがって、本件第二契約は、被告の本件雇止めにより終了したものと認められる。 |