ID番号 | : | 07709 |
事件名 | : | 解雇無効確認請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 旭川大学(外国人教員)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 学校法人Yが設置・運営する私立大学と期間一年の労働契約を締結し、外国人教員招聘規程に基づき六回更新後、新就業規則である「特別任用職員の任用並びに給与等に関する規定」等の施行に伴い、期間を一年間、勤務年限五年間の内容で、新たな身分である特任教員として勤務する(校務分掌等あり)旨の労働契約を締結し、右契約を四回更新していた外国人教員Xが、Yでは少子化や不況等の影響による入学志願者数の減少に対応するため語学教育改革等が実施されていたところ、Xの必要性が相対的に低下していること、有期間労働契約による人事の流動化等を図る必要があることを理由に、雇止めがなされたが、Xが提訴した労働契約上の地位確認を求める訴訟において、雇用期間は右勤務年限満了時の翌日から一年とし、更新可能回数は一回とする等の和解が成立し、これに基づいて右契約が一回更新されたが、期間満了により二度目の雇止めがなされたことから、本件雇止めは解雇法理の適用又は類推適用により権利濫用又は信義則違反として無効であるとして、解雇無効確認を請求したケースの控訴審(X控訴)で、原審の結論と同様に、本件労働契約は期間の定めのない労働契約に転化した、あるいは、本件雇止めの効力の判断にあたって、解雇に関する法理を類推すべきであると解することはできないとしたうえで、仮に本件雇止めに社会通念上相当とされる客観的合理的理由が必要とされるとしても、本件雇止めが権利の濫用ないし信義則違反になると認めることができないとして、Xの控訴が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 2001年1月31日 |
裁判所名 | : | 札幌高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ネ) 93 |
裁判結果 | : | 棄却(上告) |
出典 | : | 労働判例801号13頁 |
審級関係 | : | 一審/07505/旭川地/平12. 2. 1/平成9年(ワ)276号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇手続〕 前記1で認定した事実によれば、(一) 控訴人は、昭和59年2月16日、被控訴人との間で、旧招聘規程に基づき、外国人語学教員として、期間1年間の労働契約を締結し、平成3年3月31日までの7年間、6回にわたり、そのたびに契約書を作成して、期間1年間の労働契約を更新した、(二) 外国人語学教員は、従前、1年間ないし2年間で勤務を終了していたにもかかわらず、控訴人の場合には、2年間を超えて労働契約を更新していることが問題になり、平成元年4月、理事長からもその指摘を受けた、(三) 控訴人は、平成3年4月1日付けで、被控訴人との間で、被控訴人の就業規則、特任規定及び新任用内規に基づき、特別の事情のない限り継続して労働契約を更新する勤務年限を5年間と合意し、期間1年間とする特任教員として雇用する旨の労働契約を締結し、平成8年3月31日までの5年間、4回にわたり、そのたびに契約書とともに、勤務期間合意確認書(ただし、平成7年4月1日付けの労働契約を締結した際には、勤務年限の5年間が終了することから、勤務期間合意確認書は作成していない。)に署名・押印して、期間1年間の労働契約を更新した、(四) 控訴人は、外国人語学教員及び特任教員として、年俸や研究費の支給、講義の負担、研究室の貸与などの点では、専任教員(以下、原則として公募に基づき採用される期間の定めのない労働契約を締結した教員を意味するものとして使用する。)に準じた取扱いを受けたが、教授会の出席を免除され(実際にも教授会に出席することはなかった。)、恒常的に校務を分掌することもなく、控訴人の採用の方法、雇用契約の内容・形式や勤務形態は、専任教員のそれとは異なるものであった、(五) 控訴人は、被控訴人との労働契約の締結に当たり、被控訴人から予め更新しない旨の説明を受けた事実は認められないが、他方、被控訴人が、更新を約束したあるいは控訴人が更新を期待するのもやむを得ないとの言動をとった事実はない〔中略〕 (六) 平成9年3月25日の訴訟上の和解の内容も、勤務年限を2年間とする期間1年間の労働契約の締結であると認められるから、控訴人と被控訴人との間の労働契約は、実質的に、当事者双方とも、期間は定められているが、格別の意思表示がなければ当然に更新されるべき労働契約を締結する意思であったと認めることは到底できず、期間の定めのない労働契約に転化した、あるいは、本件雇止めの効力の判断にあたって、解雇に関する法理を類推すべきであると解することはできない。 したがって、控訴人と被控訴人との間の労働契約は、平成10年3月31日の期間の経過をもって、終了したと認めるのが相当である。〔中略〕 仮に、本件雇止めに社会通念上相当とされる客観的合理的理由が必要とされるとしても、前記認定の事実を前提にすれば、本件雇止めには、以下のとおり、社会通念上相当とされる客観的合理的理由があったと認めることができる。 (一) 控訴人と被控訴人との間の労働契約が13回にわたって更新され、控訴人が学校法人Yに14年間にわたり勤務したことから、本件雇止めを有効と判断するためには、雇止めを有効と判断する社会通念上相当な客観的合理的理由が必要とされると解するにしても、控訴人と被控訴人との間の労働契約は、1年毎に期間1年間とする労働契約を締結してきたものであり、控訴人の教員の地位は、期間の定めのない労働契約による専任教員とは、採用の方法、雇用契約の内容・形式や勤務形態において異なるものであるから、必要とされる客観的合理的な理由及びその程度は当然異なるものになる。 (二) 大学設置基準の改正や大学進学者数の減少等の社会的・経済的情勢の変化に対応して、学校法人Yにおいても、被控訴人主張のような内容の語学教育の改革をする必要があることは、首肯できる〔中略〕 右検討したように、控訴人と被控訴人との労働契約は、控訴人を期間1年間の特任教員として雇用するというものであり、被控訴人が平成10年から実施する語学教育改革の必要性やその内容及び被控訴人の経営状況を考慮すれば、本件雇止めを有効と認めるべき社会通念上相当な客観的合理的理由があると認めることができる。本件雇止めが権利の濫用ないし信義則違反になると認めることはできない。 |