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ID番号 07720
事件名 補助参加申出の却下決定に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件
いわゆる事件名 レンゴー事件
争点
事案概要  段ボールの製造販売会社Z(抗告人)が、職務内容の変更、配置転換、長時間労働という状況下で汎血管内凝固(傷病経過に影響を及ぼした病名としてくも膜下出血)を直接死因として死亡した従業員Aの遺族X(基本事件原告)が、栃木労基署長Y(基本事件被告)に対し、労災保険法に基づく遺族補償給付及び葬祭料の不支給処分の取消を請求し、当該訴訟で業務起因性の有無等が争われていたところ、仮に労働災害の認定がなされた場合には、事実上Zの損害賠償義務の存否、労災保険の保険料率に影響が及ぶことから、Zにも利害関係があるとして、ZがYを補助するための補助参加の申出書を提出したケースの上告審で、最高裁は、一審と同様に請求を棄却した原審を変更し、本案訴訟において、Yが敗訴した場合、徴収法一二条三号所定の一定規模以上の事業においては、次々年度以降の保険料が増額される可能性があり、当該事業の事業主は、労基署長の敗訴を防ぐことに法律上の利害関係を有し補助参加を認めるのが相当であるとして、Zの工場が徴収法一二条三項各号所定の一定規模以上の事業に該当するかどうかの判断を原審に差し戻した事例。
参照法条 労働保険の保険料の徴収等に関する法律12条3項
民事訴訟法(平成8年改正前)42条
行政事件訴訟法22条1項
体系項目 労災補償・労災保険 / 審査請求・行政訴訟 / 事業主の訴訟参加
裁判年月日 2001年2月22日
裁判所名 最高一小
裁判形式 決定
事件番号 平成12年 (行フ) 3 
裁判結果 破棄差戻(差戻し)
出典 時報1745号144頁/タイムズ1058号119頁/裁判所時報1286号3頁/労働判例806号12頁
審級関係 差戻控訴審/07917/東京高/平14. 2.27/平成13年(行ス)26号
評釈論文 阿部和光・平成13年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1224〕233~235頁2002年6月/貝阿彌誠、他・平成13年度主要民事判例解説〔判例タイムズ1096〕162~163頁2002年9月/手塚和彰・ジュリスト1220号139~142頁2002年4月1日/松村和徳・私法判例リマークス〔25〕<2002〔下〕>118~121頁2002年7月/浜田陽子・法政研究〔九州大学〕69巻1号161~168頁2002年7月/保原喜志夫・月刊ろうさい53巻7号9~13頁2002年7月/和田直人・東京都立大学法学会雑誌
判決理由 〔労災補償・労災保険-審査請求・行政訴訟-事業主の訴訟参加〕
 (1) 労基法84条によると、労災保険法に基づいて労基法の災害補償に相当する給付が行われるべきものである場合においては、使用者は補償の責を免れるものとされているから、本案訴訟において本件処分が取り消され、相手方に対して労災保険法に基づく遺族補償給付等を支給する旨の処分がされた場合には、使用者である抗告人は、労基法に基づく遺族補償給付等の支払義務を免れることになる。そうすると、本案訴訟において被参加人となる栃木労働基準監督署長が敗訴したとしても、抗告人が相手方から労基法に基づく災害補償請求訴訟を提起されて敗訴する可能性はないから、この点に関して抗告人の補助参加の利益を肯定することはできない。また、本案訴訟における業務起因性についての判断は、判決理由中の判断であって、労災保険法に基づく保険給付(以下「労災保険給付」という。)の不支給決定取消訴訟と安全配慮義務違反に基づく損害賠償請求訴訟とでは、審判の対象及び内容を異にするのであるから、抗告人が本案訴訟の結果について法律上の利害関係を有するということはできない。原決定中、抗告人の上記主張を排斥した部分は、これと同旨をいうものとして、是認することができる。この点に関する諭旨は採用することができない。〔中略〕
 徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業においては、労災保険給付の不支給決定の取消判決が確定すると、行政事件訴訟法33条の定める取消判決の拘束力により労災保険給付の支給決定がされて保険給付が行われ、次々年度以降の保険料が増額される可能性があるから、当該事業の事業主は、労働基準監督署長の敗訴を防ぐことに法律上の利害関係を有し、これを補助するために労災保険給付の不支給決定の取消訴訟に参加をすることが許されると解するのが相当である。したがって、抗告人の小山工場(小山工場につき徴収法9条による継続事業の一括の認可がされている場合には、当該認可に係る指定事業)が徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業に該当する場合には、本件処分が取り消されると、次々年度以降の保険料が増額される可能性があるから、抗告人は、栃木労働基準監督署長を補助するために本案訴訟に参加することが許されるというべきである。原決定中、これと異なる見解に立って抗告人の補助参加の利益を否定した部分には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があるというべきである。論旨はこの趣旨をいう限度で理由がある。
 4 以上の次第で、原決定は破棄を免れず、本件については、抗告人の小山工場(小山工場につき徴収法9条による継続事業の一括の認可がされている場合には、当該認可に係る指定事業)が徴収法12条3項各号所定の一定規模以上の事業に該当するかどうかにつき更に審理を尽くす必要があるから、これを原審に差し戻すこととする。