ID番号 | : | 07721 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 協同乳業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 退職三週間前まで約三年間、会社Yの関連子会社の代表取締役として出向していた間について雇用保険に加入できなかった元従業員Xが、Yに復帰後、選択定年制により退職したが、雇用保険の失業給付を受けるための被保険者期間の要件を具備できなかったため、退職後失業給付を受給できず、さらにYの就業規則には、「従業員が関連会社に出向するなどして定年退職後の失業給付受給資格を喪失した場合、失業給付相当額を補填する」旨の規定が存在していたが、Xは定年退職ではなく選択定年制による退職であったため、右規定が適用されなかったことから、会社には得べかりし失業給付相当額を補填する義務があり、仮にそうでなくともYにはXが退職を申出た際に、内規の適用がないことなどを告知すべき信義則上の義務があったにもかかわらず、それを怠ったのであるから、右失業給付相当額を賠償すべき義務があるとして、その支払を請求したケースの控訴審(X控訴)で、原審と同様、XとYとの間に、選択定年制度により退職した場合には失業給付相当額を補填する旨の合意があったことを認定することができず、またYに信義則上の義務違反があったということはできないとして、Xの控訴が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 雇用保険法10条1項 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2001年2月22日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ネ) 2010 |
裁判結果 | : | 控訴棄却 |
出典 | : | 労経速報1762号20頁 |
審級関係 | : | 一審/07531/東京地/平12. 3.27/平成11年(ワ)22796号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 確かに、被控訴人には、従業員が関連会社の役員として出向することにより支給されなくなった失業給付相当額を補填する本件内規が存在したが、本件内規は、控訴人が退職する前に廃止されているだけでなく、本件内規はもともと定年によって退職する者を対象としたものであり、「選択定年制度」により退職した者(控訴人)に適用される余地はなかったことが明らかである。 この点について控訴人は、本件内規の制度趣旨からすると定年による退職と「選択定年制度」による退職とを区別すべき合理的理由はない旨主張するが、本件内規はもともと失業給付相当額を補填する場合を右1、(一)後段記載のとおり限定している上、前者の場合は、一定年齢に達したことにより自分の意思とは関係なく退職する場合であり、失業給付相当額を補填する合理性が認められるが、これに対し、後者の場合は、自らの意思に基づく退職であり、かつ、それ相応の退職金の加算支給が受けられることをも併せ考えると、前者の場合に失業給付相当額が補填されるからといって、後者の場合にも失業給付相当額が補填されるべきであるということは到底できない。控訴人の右主張は採用することができない。 なお、証拠(略)によれば、被控訴人が、本件内規が制定される前である昭和六三年に希望退職した出向者(A)に対し、失業給付の減額分相当額六五万九七〇〇円を補填したことが認められるが、右一例をもって、被控訴人において、出向者が定年退職したとき以外にも本件内規に定められた失業給付相当額の補填を行う労使慣行が成立していたことを認めるに足りず、他に、右のような労使慣行があったことを認めるに足りる証拠はない。 そうすると、「選択定年制度」により退職した控訴人には、もともと本件内規が適用される余地がない上、本件内規は既に廃止されているし、「選択定年制度」により退職した出向者に失業給付相当額の補填が行われてきた労使慣行があったことも認めがたいから、結局、控訴人と被控訴人との間に「選択定年制度」により退職した場合には失業給付相当額を補填する旨の合意があったことを認定することができない。 |