全 情 報

ID番号 07725
事件名 配置転換処分無効確認等請求事件
いわゆる事件名 協栄交通事件
争点
事案概要  タクシー事業を主な目的とする株式会社Yの定時制従業員として雇用され、以後、タクシー運転に従事してきたXが、途中で追加的に利用者を乗車させることが禁止されていないにもかかわらず、癌研究会付属病院に向かう途中、友人を途中乗車させようとした乗客に対し、このようなことを勝手にされたら困るとの不適切な注意をしたうえで、「癌患者は早く死ね」といったタクシー運転手としてきわめて不穏当な発言をしたうえ、Yに対しても反省の意を示さなかったことを理由に、一定期間、タクシー乗務を停止し、内勤業務に携わるよう命じられたことから(その後、Xは就労しなかった)、右配転命令は無効であるとして、主位的に右配転命令の無効確認及び配置転換後の賃金支払を、予備的に受領遅滞又は不法行為に基づく損害賠償の支払いを請求したケースで、右内勤業務に携わるように命じた本件命令はXに対して接客態度等につき反省を促し、ひいてはYにおけるタクシー事業の適正を図るために業務上必要かつ合理的なものであるということができ、他方、Xに対し不当に不利益を与えるものとはいえないとして、配置転換の無効確認請求が棄却され、さらにXの不就労はYの帰責事由によるものと認めることはできないなどとしてその他の請求も棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
民法709条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償
裁判年月日 2001年2月26日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成11年 (ワ) 16012 
裁判結果 棄却
出典 労経速報1763号16頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔配転・出向・転籍・派遣-配転命令の根拠〕
 前提事実、前記1認定の事実及び原告本人の供述によれば、タクシー乗務において、途中で更に利用者を乗車させることが何ら禁止されていないにもかかわらず、原告が、本件事件において、癌研病院に向かう乗客に対し、このようなことを勝手にされたら困るとの不適切な注意をしたうえ、「早く死ね」と、タクシー運転手として極めて不穏当な発言をしたこと、原告が、被告に対し、本件事件につき、悪いのは乗客の方であり、自分は正当である旨主張し、あまり反省の意を示さなかったことが認められる。
 これらによれば、一定期間、内勤業務に携わるように命じた本件命令は、原告に対して接客態度等につき反省を促し、ひいては被告におけるタクシー事業の適正を図るために、業務上必要かつ合理的なものということができ、他方、原告に対して不当に不利益を与えるものとはいえない。〔中略〕
〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕
 本件命令が業務上合理的なものであることは、前記2(2)のとおりであり、前記2(1)イの認定判断によれば、面談の日程調整に関する被告の対応が明らかに誤りであるとまでいうことはできないから、これらに関する被告の被用者の行為が違法であるということはできない。〔中略〕
 原告の不就労が、被告の帰責事由によるものと認めることはできないことは、前記3のとおりであるから、仮に使用者が労働者の就労を受ける義務を信義則上有する場合があると解したとしても、被告がこのような義務に違反したものということはできない。
 (5) 以上によれば、受領遅滞又は不法行為に関する原告の主張は採用することができず、原告の損害賠償請求はいずれも理由がない。