ID番号 | : | 07731 |
事件名 | : | 退職金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 阪和銀行事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営破綻のため業務停止命令を受けた銀行Yの従業員であったXら九名が、業務停止命令後、Yが業務終了・解散に至るまでの間に、Yを退職し、その時点における退職金規定に基づいて算出された退職金を受領したが、その後、Yが組合に対して申立てた退職金に関する調停が成立し、その調停条項をもとに、Yと組合間で在職の職金を対象とする退職金に関する協定書及び労働協約が締結され、1.〔1〕五〇歳以上は規定退職金 (四九歳までは規定退職金の三倍)の一五〇%と〔2〕基本給と家族手当の合計に勤続年数に応じて最高二〇ヶ月をかけたもの、を合計した額を支給する、2.すでに退職した者のうち退職時期が一定時期であった者について〔1〕の方法で算定された金額を旧退職金規程による退職金の追加金として支払うことが定められていたところ(Xらは2.の対象にはならない)、Yに対し、主位的に、右労働協約に基づく退職金の増額分の追加支給を請求するとともに、予備的に、退職金の増額支給者を一定時期の退職者に限定する不合理な差別的内容を含む労働協約を締結したことは不法行為を構成するとして、損害賠償の支払を請求したケースで、労働協約は原則として、その協約締結時ないし協約有効期間における労働組合の組合員を対象とすべきであり、特段の事情がない限り退職して組合員たる資格を失った者が、利益を享受しえなくなることは当然のことであるとしたうえで、YがXらに労働協約から排除する意図のもとに早期退職を勧めたなどの特段の事情が認めらないことなどからして、本件労働協約のうち支給対象を限定した部分が平等原則、信義則ないし控除良俗に反して無効であるとはいえないとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法11条 労働組合法16条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 早期退職優遇制度 |
裁判年月日 | : | 2001年3月6日 |
裁判所名 | : | 和歌山地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成9年 (ワ) 674 平成10年 (ワ) 726 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例809号67頁/労経速報1781号9頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-早期退職優遇制度〕 労働組合は、使用者と労働協約を締結するに当たって、当該協約締結時における組合員ないし個々の協約有効期間における組合員の利益を擁護することを第一義的使命として労働協約を締結し、使用者も、右のとおりの組合員を対象とすることを前提に労働協約を締結するものであるから、労働協約は、原則として、その協約締結時ないし協約有効期間における労働組合の組合員を対象とするものというべきである。したがって、特段の事情がない限り、退職し組合員たる資格を失った者が、退職後に締結された労働協約による利益を享受しえなくなることは、当然のことである。〔中略〕 本件労働協約を締結した被告銀行Yないし従業員組合において、将来締結されるべき労働協約から排除する意図のもとに、ことさら原告らに早期退職を勧めたなどの特段の事情がない限り、労働協約締結前後に退職した従業員間において、結果として、その処遇に差異が生じることはやむを得ず、これをもって、原告らの主張するような平等原則、信義則ないし公序良俗に反するとまでいうことはできない。そして、本件全証拠によるも、原告らに対し本件労働協約の当事者が将来締結されるべき労働協約から排除する意図のもとにことさら早期退職を勧めたなどの右にいう特段の事情は認めら(ママ)ないから、原告らが本件労働協約による退職金を受給し得ないことはやむを得ないものというべきである。 したがって、本件労働協約のうち支給対象を平成9年5月20日以降に退職した従業員に限定した部分が平等原則、信義則ないし公序良俗に反して無効であるとはいえない。 |