ID番号 | : | 07744 |
事件名 | : | 雇用契約存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 恵泉寮事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 養護施設の設置経営等を目的とする社会福祉法人Y1に雇用されていたXら六名(労働組合の組合員であり、X1は組合支部委員長であった)が、Yでは、措置児童数の漸減等から児童施設を廃止し、知的障害者施設の経営に転換を行う旨の決定がなされ、Yと労働組合との間で団体交渉が重ねられる一方で、組合は施設転換の撤回を主張してストライキを実施していたが、その後、Yと組合との間では施設転換と転換後の労働条件について誠意を持って話し合う旨の和解が成立していたにもかかわらず、Yは組合本部役員の出席を理由に団体交渉を打ち切って団交拒否を行うとともに、施設就労の意思確認書の不提出を理由にXらの施設転換のための研修への参加を拒否し、その後、児童施設の廃止に先立って、就業規則に基づき事業廃止を理由に職員全員を即時解雇したため(なお、YはXらを含む従前雇用していた職員全員に対し、新施設の職員募集を通知し、Xらは右募集に応じなかったが、元職員一〇名が採用された)、Yに対し、本件解雇は整理解雇の要件を充足せず、また不当労働行為にも該当するなどと主張して、雇用契約上の地位の確認及び賃金支払を請求したケースで、本件解雇の意思表示は就業規則(天変事変その他の事由により事業の変更、縮小、廃止)の規定の要件を充足しないのに、この規定に基づくとしてなされたほか、それを懲戒解雇の意思表示とか、普通解雇の意思表示と見ることもできず、かつ、それらの解雇事由の対象となるべき事実も存在しないのにされたものであるから、解雇権の濫用といえ、無効であるとして、Xらの請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項9号 労働基準法89条1項3号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 解雇(民事) / 解雇事由 / 勤務成績不良・勤務態度 解雇(民事) / 解雇権の濫用 |
裁判年月日 | : | 2001年3月26日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成2年 (ワ) 266 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 労働判例813号62頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-企業解散・事業の一部廃止・会社制度の変更〕 両施設とも福祉施設である点には変わりなく、知的障害者施設で特に職員となる資格等が必要である旨の主張、立証はなく、現に、被告も、当初は、施設転換前後での職員の継続を前提とした対応をとっており、新施設の職員募集に際して特に資格要件を定めておらず、現に、旧施設の職員を多数採用していること等に鑑みると、施設転換を事業廃止と新規事業の開始と同視することはできない。労働条件の変更の問題については、雇用の継続を前提とし、施設転換の必要性の検討をした上、就業規則等の不利益変更の効力の問題等で論ずべきものである。 (四) このように、施設転換は不合理とまではいえないものの、施設転換によって事業廃止があったとは認められないから、その余の点について判断するまでもなく、この被告の主張は理由がない。〔中略〕 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕 整理解雇とは、人員削減のため労働者を解雇することをいうものであるところ、本件においては、新施設で労働者の人数は減じていないから、そもそも整理解雇の問題と捉えることは困難である。したがって、当然のことながら、人員削減の必要性も、そのために整理解雇を選択する必要性もなく、更には、全員解雇しているので、被解雇者選定の妥当性も問題とならず、全員解雇について、被告側から労働者側に説明・協議をしたとも認められないから、手続の妥当性も認められない。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 本件解雇は、文書でなされたが、そこには、就業規則16条3項に基づくと明記されていること、被告は、その文書を原告らに交付するに当たって、同項に当たる旨説明していること、本件解雇は全職員に対してなされたこと、原告らに懲戒事由の説明は一切なかったことに鑑みると、本件解雇の意思表示に原告らに対する懲戒解雇の意思表示が含まれていると見ることはできない。 したがって、本件解雇を懲戒解雇とみることはできないから、懲戒解雇をいう被告の主張は理由がない。 (二) ちなみに、被告が主張する事由は、懲戒解雇事由には該当しない。〔中略〕 〔解雇-解雇事由-勤務成績不良・勤務態度〕 本件解雇の態様からすると、本件解雇の意思表示を、原告らに対する就業規則16条2項による解雇の意思表示とみることはできない。したがって、その余の点について判断するまでもなく、被告の主張は理由がない。 (二) ちなみに、被告が主張する事由も、就業規則16条2項にいう「勤務成績又は技術が著しく不良で就業に適しないと認められたとき」に該当しない。〔中略〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 このように、本件解雇の意思表示は、就業規則16条3項の要件を充足しないのに、同項に基づくとしてされたばかりか、それを、懲戒解雇の意思表示とか、同16条2項に該当する普通解雇の意思表示と見ることもできず、かつ、それらの解雇事由の対象となるべき事実も存在しないのにされたものであるから、解雇権の濫用といえ、無効である。 |