ID番号 | : | 07757 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 三精輸送機事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 輸送機等の製作・販売等を業とする株式会社Yで、「常用」と呼ばれる身分で、正社員、派遣労働者と共に、正社員とほぼ同様の勤務日及び勤務時間の指定・管理を受けて工場内で製品の仕上組立作業等に専属的に約二〇数年従事してきたXら二名が、かつては組子を有した組の代表であり、Yとの間で請負工事取引協定書を締結したり、また自ら工場内下請協力会世話人と称してYと交渉にあたったこともあったが、その後Yから申入れられた「常用」とYとの契約が完全な請負契約であることを明確化する新規請負契約書の締結を拒否したことを理由に、Yから契約解消を通告されたため、Yとの間の契約が労働契約であると主張して、労働契約上の地位確認及び未払賃金の支払を請求したケースで、XらはYの指揮監督下で労務を提供していたということができ、報酬も労務提供の対償であるといえるから、Xらは労働者性を満たし、その契約は労働契約であったとしたうえで、協定書に記載された有効期間は一年となっているが、その実質において期間の定めのない契約に類似する者であると認められ、Xらにおいて右期間満了後も契約関係の継続を期待することに合理性があるところ、Yは、整理解雇要件が具備されているとは認められない状況下で代償的措置を明確にしないまま、新規請負契約への以降及び従前の更新を拒絶したのであり、Yに契約更新を拒絶することが相当と認められる特段の事情が見られないことから、YがXらとの間の労働契約を期間満了により一方的に終了させることは許されないとして、請求が一部認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 労働基準法2章 労働基準法14条 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 派遣労働者・社外工 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 2001年5月14日 |
裁判所名 | : | 京都地福知山支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成11年 (ワ) 24 |
裁判結果 | : | 一部却下、一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例805号34頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 宮本平一・季刊労働者の権利243号53~56頁2002年1月/香川孝三・ジュリスト1217号136~139頁2002年2月15日 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-派遣労働者・社外工〕 原告らと被告間の各労務供給契約に請負契約と見られうる側面があるにしても、その労務提供が被告の指揮監督下に行われ、その報酬が労務提供の対償であるならば、原告らは、労働者性を満たし、その契約は労働契約であることになる。 そして、原告らは、(1)正社員とほぼ同様の勤務日及び勤務時間の指定及び管理を受けて、被告の製造業務に専属的に従事し、(2)被告の提供する設備を用い、被告の工場内又は被告の職制から指示された場所において、被告の職制の指示に基き、属する仕上げ3班としての作業を行うほか、必要に応じて忙しい他の部署への応援作業に従事し、(3)しかも、組子に対する指示も、被告の職制が直接に行っていて、原告らはこれに関与する立場にはないなど労務提供についての代替性もなかったのであるから、原告らは、被告の指揮監督下で労務を提供していたということができるし、報酬についても、原告らは、基本的に時間外割増賃金を含む時間給の支給を受けていたから、それが労務提供の対償であるということができる。 したがって、原告らは、労働者性を満たし、その契約は労働契約であることになる。〔中略〕 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 前認定のとおり原告らとの契約関係が昭和47、8年から継続されてきたし、そもそも当初契約については、期間の定めがあったとは認められないばかりか、本件協定書と同日付で締結された本件覚書(甲11、乙4)には、前記基本協定25条に関し、有効期間が1か年となっているのは、長期の契約を結ぶことにより同じ条件にて隷属することを避けることにあり、不満な条件であれば双方いずれかの申し出により現契約を破棄し新しい条件の元(ママ)に契約を結び直すことができることを意味するものであって、1か年経過時点で契約解除するとのことではないことを承知おかれたい((5)項)とする条項があることなどからすると、原告らと被告間の労働契約は、本件協定書25条に関わりなく、実質において、期間の定めのない契約に類似するものであると認められることになる。 したがって、原告らにおいて本件協定書に記載された期間満了後もこの契約関係が継続されるものと期待することに合理性があるから、従前の取扱を変更して契約更新を拒絶することが相当と認められる特段の事情が被告に存しない限り、被告において、原告らとの間の労働契約を期間満了により一方的に終了させることは許されない。〔中略〕 証拠(〈証拠・人証略〉)によれば、被告の売上が平成9年以降、年々減少しつつあり、平成12年3月期のエレベータ、舞台装置及び遊戯機械についての受注残高は、平成9年3月期のおよそ半分となっていること、しかし会社全体としての当期利益は平成10年3月期に5億4700万円に減少したものの、その後8億円台を維持していることの事実が認められる。 したがって、今直ちに経営合理化のため人員整理をすすめる必要性があったことが客観的に認められる状態であるとはいえないし、まして、十分に協議し、希望退職者を募るといった手段その他解雇を回避するために有効な何らかの方策を講じたことを窺うことはできないから、未だ解雇回避のための十分な努力を払ったということはできない。 (3) 結局、被告は、整理解雇要件が具備されているとは認められない状況下において、代償的措置を明確にしないまま、原告らの地位を不安定にしかねない内容の新規請負契約への移行を提案して、平成10年2月20日限りで従前の契約の更新を拒絶したにとどまることになるのであり、この被告の契約更新拒絶について、それが相当と認められるに足り(ママ)だけの特段の事業経営上の合理的必要性が被告にあったとは認められないし、正にそのような情勢のもとで、新規請負契約の締結に応じるか応じないかは、常用各人がそれぞれの事情を踏まえて判断し、対応すべき事柄であったことになる。それゆえ、2種類の契約が存続し、新規請負契約の締結に応じた者と応じなかった原告らとで契約上の地位が異なることになるからといって、それは契約関係が異なることの帰結であって他の者との差別とはならないし、原告らがその地位を失うべき理由ともならない。 また、平成11年2月20日に更新拒絶後1年が経過したからといって、同日限りで原告らと被告との間の労働契約関係が終了したとすべき理由も認められない。 したがって、契約終了をいう被告の主張は採用できない。 (4) そうすると、原告らは、被告に対し、労働契約上の権利を有する地位にあるというべきところ、被告がこれを争っているので、この地位の確認を求める原告らの請求は理由がある。 |