ID番号 | : | 07768 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東陽社製作所事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 自動車及び二輪車の部品製造等を営む株式会社Yで課長職にある従業員であり、また会社従業員で組織する労働組合の執行委員長であったXが、業務命令違反や信用毀損行為、職場離脱行為、業務妨害等を行ったこと、また過去に訓告や出勤停止を受けていることを理由に、懲戒解雇されたことから、〔1〕右訓告処分の不存在の確認(予備的に無効確認)及び右出勤停止処分の無効確認及びそれに伴う未払賃金の支払、〔2〕懲戒解雇が無効であると主張して労働契約上の地位の確認及び賃金等の支払、〔3〕右処分を理由になされた賞与の減額分の支払、〔4〕各処分を受け又は処分したとされた不法行為に基づく慰謝料の支払を請求したケースで、〔1〕については、訓告処分の存在自体が認定できず、またXには何ら服務規律違反等が認められないとして、請求が認容、〔2〕についても、Y主張の懲戒事由が存在しないことは明らかであるとして、本件解雇は無効であるとして、請求が一部認容、〔3〕についても、請求が一部認容、〔4〕についても、Yは以前からXを解雇することを意図し、些細なことを取上げて懲戒処分を加え又は加えようとし、ついには到底懲戒解雇事由には該当しないことの明らかなことを理由として本件解雇をするに至ったものであるとして、Yの行為はXに対する故意又は重過失による不法行為を構成するとして、慰謝料請求が一部認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 民法709条 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の濫用 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 服務規律違反 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 使用者に対する労災以外の損害賠償 |
裁判年月日 | : | 2001年6月11日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成11年 (ワ) 29440 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1782号3頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の濫用〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-服務規律違反〕 上記認定事実に基づいて検討するに、まず、総務部長就任が従業員に公表されず、原告においてそのことを明確に認識していない以上、Aを上位の役職者として応接しなかったことをもって服務規律違反、職場の秩序の紊乱行為等に該当するとして懲戒処分を行うことはできない(書証略)。また、前認定の経過によれば、設計課長である原告が総務課の平課員であるAに対してした発言としては、何ら服務規律違反、職場秩序の紊乱行為等に該当するものではない。また、設計課と総務課では業務分掌が異なることを考慮しても(書証略)、懲戒事由としての越権専断行為に該当するとは認められない。また、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 よって、被告の原告に対する本件出勤停止は懲戒事由がないにもかかわらず行われた無効なものである。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務命令拒否・違反〕 一般に、上司からの開発設計作業の職務命令に具体的な仕様や期間の明確な指示がない場合、当然にはその命令に従業員に対し途中経過等を報告せよとの業務命令が含まれていると解することはできず、ましてやその違反が懲戒処分の対象となるような業務命令であるとは到底認められない。また、被告において、特にそのような取扱いが定められていることや、被告代表者が特に報告を指示したことを認めるに足りる証拠はないから、原告が途中経過等を報告しなかったことが直ちに職務命令に違反する行為に該当すると認めることはできない。 エ そうすると、原告に本件懲戒解雇事由(1)に該当する事由があったとは認められない。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕 原告が懲戒解雇事由に該当すると主張するのは、前記(一)(7)で認定した記載部分であると解されるが、右記載部分が恫喝・脅迫に当たるということはできず、業務妨害、信用毀損行為があったものとは認められない。また、弁明書にも懲戒事由に該当するような記載は存しない。したがって、本件懲戒解雇事由(3)に関する被告の主張は理由がない。 (4) 以上の次第であるから、原告に懲戒解雇事由があるとは認められない。〔中略〕 〔労働契約-労働契約上の権利義務-使用者に対する労災以外の損害賠償〕 被告は以前から原告を解雇することを意図し、些細なことを取り上げて懲戒処分を加え又は加えようとし、ついには到底懲戒解雇事由には該当しないことの明らかなことを理由として本件解雇をするに至ったものであり、これらの行為は原告に対する故意又は重過失による不法行為を構成し、これによる慰謝料額は被告の行為の態様及び時期、原告の立場、その他本件に現われた一切の事情を考慮すると一〇〇万円が相当である。 |