全 情 報

ID番号 07770
事件名 地位確認等請求上告事件
いわゆる事件名 トーコロ事件
争点
事案概要  卒業記念アルバムの製造等を業とする株式会社Yと期間の定めのない雇用契約を締結し、電気写植機のオペレーターとして住所録作成業務に従事し、Yの役員、従業員らで構成される親睦会A会に入会していたXが、業務の繁忙期に残業時間を延長するよう要請されたが、眼精疲労を理由にこれに応じず、また人事考課の自己評価欄に記入しなかったため協調性がないとして、年末賞与につき三万円のマイナス査定がなされ、さらに、一部を除くYの全従業員に対して、Yでは不法な残業が行われている等を内容とする手紙を送り、他方で、Yからの残業延長要請を眼精疲労を理由に断っていたため、業務命令として残業命令を告げられるに至ったが(A会代表がYとの間で時間外協定を締結している)、これについても診断書提出とともに拒否したため、YはXに対し自己都合退職するよう勧告し、Xがこれを拒否すると、就業規則上の諭旨退職・懲戒解雇事由等を定める規定に該当するとして解雇通告されたことから、XがYに対し、〔1〕右解雇無効を主張して、雇用契約上の権利を有する地位の確認及び賃金支払を請求するとともに、〔2〕右解雇は不法行為又は債務不履行に該当するとして慰謝料の支払を請求したケースの上告審で、一審および原審と同様、最高裁は、〔1〕について、A会代表者は「労働組合」の代表者とも「労働者の過半数を代表する者」とも認められず、A会代表者とYが締結した本件三六協定は無効であるから、その余の点について判断するまでもなく、同協定を前提とするYの残業命令は有効でなく、Xはこれに従う義務はない、原判決に所論の違法はないとして、右業務命令違反を理由とする解雇は無効であるとしていた原審の判断を相当として、Yの上告を棄却した事例。
参照法条 労働基準法36条1項
体系項目 労働時間(民事) / 三六協定 / 締結当事者
裁判年月日 2001年6月22日
裁判所名 最高二小
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (オ) 555 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例808号11頁
審級関係 控訴審/07048/東京高/平 9.11.17/平成6年(ネ)4745号
評釈論文 藤内和公・岡山大学法学会雑誌52巻1号384~379頁2002年10月/藤内和公・労働判例百選<第7版>〔別冊ジュリスト165〕114~115頁
判決理由 〔労働時間-三六協定-締結当事者〕
 所論の点に関する原審の事実認定は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り、上記事実関係の下においては、協定当事者が労働者の過半数を代表する者ではないから本件三六協定が有効であるとは認められず、被上告人が本件残業命令に従う義務があったということはできないとし、被上告人に対する本件解雇を無効とした原審の判断は、正当として是認することができる。