ID番号 | : | 07772 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 日活エンタープライズ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 雇用者をY会社、労働者をXとする雇用契約書及びXがYを退職する際の退職条件(退職年月日や未払い給与、賞与、慰労金、退職金の金額等)を記載した協定書が存在し、右契約書記載の雇用期間にあたる時期において、Xは会社Yの代表者Aの指揮命令下で、B社所有の不動産に係る競売対策その他の事務を執り行い、右不動産に対して差押さえをしていた銀行や都税事務所らの承認交渉事務にYの従業員の立場でこれに臨み、この間、Aとの合意に基づき不定期に金員をAから受領していたところ、XがYに対し、右期間中はXとYとの間で雇用契約が成立していたとして、退職条件を記載した協定書に基づき未払賃金・賞与、慰労金、退職金の支払を請求したケースで、Xに不定期に支払われていた金員が賃金であるとすると、それは労基法二四条二項に反するものであることなどからすれば、AがXに対して支払を約束した金員は、労働の対価としての賃金であることはできず、またXがYとの雇用契約に基づいて就労していたとするXの主張等についても疑念があることからすれば、本件雇用契約に係る合意が契約として有効に成立しているとしても、これがXとY間の雇用契約としての性質を有するものとは認めることはできないとし、さらにこれを前提とする本件協定に基づいて賃金等の支払を求めるXの請求は理由がないとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 労働基準法2章 民法623条1項 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 成立 |
裁判年月日 | : | 2001年6月26日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 6830 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労経速報1790号14頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-成立〕 原告は、平成一〇年四月一日ころから平成一一年一〇月二一日までの間、この当時の被告の代表者であったAの指揮命令下で、Bの所有する本件不動産に係る本件競売対策その他の事務を執り行った。その事務の主たるものとしては、本件不動産を被告が買い取ることについて、本件不動産に対して差押えをしていたC銀行及び東京都港区都税事務所らの承諾を取る交渉事務であった。なお、このような交渉に際しては、原告は被告の従業員の立場でこれに臨んでいた。 この間、原告は、Aから、平成一〇年四月に一〇万円を受け取ったほか、不定期に金員を受け取ることがあったが、このような方法で金員が支給されることについては、平成一〇年四月当時Aから告げられていた。〔中略〕 賃金は雇用契約の最も重要な要素の一つであるところ、本件雇用契約書上の金員の支払約定が労働の対価としての賃金とはいい難い((1))上、原告が被告との雇用契約に基づいて就労をしていた旨の原告の主張等についても疑念がある((2))ことからすれば、本件雇用契約書に係る合意が契約として有効に成立しているとしても、これが原告と被告との間の雇用契約としての性質を有するものであると認めることはできない。他に原告と被告との間に雇用契約が成立したことを認めるに足りる証拠はない(原告も、本件雇用契約書の調印以外の方法による雇用契約の締結について何ら供述ないし陳述をしていない)。 なお、証拠(略)によれば、被告は原告に対して、平成一〇年五月一一日から同年一〇月二一日にかけて、「交通費」、「定期代」の名目による金員を出金したことが認められるが、この事実のみによって、原告と被告とが雇用契約を締結していたとの事実を認めることはできない。 |