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ID番号 07773
事件名 地位確認請求控訴事件
いわゆる事件名 カンタス航空事件
争点
事案概要  オーストラリアに本店を置く外国航空会社Yに、〔1〕シドニーでの教育訓練終了日から数えて五年を超さない期間を契約期間として日本ベース客室乗務員として雇用され、期間満了により契約が失効するはずであったところ、組合と会社の交渉の結果、さらに五年間毎年契約更新をする旨の契約に同意していたX1~X6ら六名、また〔2〕オーストラリアベースの正社員であったが日本ベースに移るにあたりYを退社して改めて日本ベースの契約社員として一年の雇用契約を締結し、翌年以降について「勤務成績が良好でないことをすること」という要件に該当しない限り五年間については毎年契約更新する旨の合意がなされていたX7~X12ら六名が、期間満了によりそれぞれ雇用契約が終了したことを理由に雇止めされたことから、右雇止めは解雇の法理の適用又は類推適用により、無効であるとして、〔1〕労働契約上の地位確認及び〔2〕未払い賃金の支払を請求したケースの控訴審で、原審はいずれの請求も棄却していたが、XY間の契約は期間の定めのない契約であるとは認められないものの、採用時、就労後も雇用契約が期間満了後も更新されることが確実であるかのような期待を持たせるような言動がなされており、Xらも雇用契約が正社員と同様に継続されるとの期待・信頼を抱き、そのような相互関係のもとに労働関係が維持・継続された実態があることから、雇止めの効力を判断するに当たっては解雇法理が類推適用できるとしたうえで、期間満了したというだけの本件雇止めは信義則上許されないとして、Xらの控訴が〔1〕について認容、〔2〕についても一部認容されて、原審の判断が変更された事例。
参照法条 労働基準法14条
労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 2001年6月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ネ) 2577 
裁判結果 原判決変更(請求認容)、一部棄却(上告(和解))
出典 時報1757号144頁/労働判例810号21頁/労経速報1777号3頁
審級関係 一審/07534/東京地/平12. 3.30/平成10年(ワ)13608号
評釈論文 ・労政時報3505号70~71頁2001年9月7日/古川景一・労働法律旬報1516号4~12頁2001年11月25日/松本哲泓・平成13年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊1096〕276~277頁2002年9月/中山代志子・経営法曹134号16~27頁2002年7月/田中治、近藤雅人・税経通信57巻3号261~268頁2002年2月/藤原稔弘・平成13年度重要判例解説〔ジュリスト臨時増刊1224〕239~241頁2002年6月/野川忍・ジュリスト1222号214~217頁2002年5月1日
判決理由 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕
 控訴人らと被控訴会社の契約は、雇用期間を1年間とし、更新の期間を5年間と区切った、期間の定めのある雇用契約であるというべきであるから、期間の定めのない雇用契約であることを前提として、本件雇止めについて、解雇に関する法理が適用されるべきであるとする控訴人らの主張は、採用することができない。〔中略〕
 期間の定めのある契約であっても、期間の満了毎に当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあり、採用、雇止めの実態、仕事内容、採用時及びその後における労働者に対する使用者の言動等により、単に期間が満了したという理由だけでは使用者において雇止めを行わず、労働者もまたこれを期待、信頼し、そのような相互関係のもとに労働契約関係が存続・維持されてきたような事情がある場合には、雇止めの効力を判断するに当たっては、解雇に関する法理を類推し、経済事情の変動により剰員を生じるなど使用者においてやむを得ない特段の事情がない限り、期間満了を理由として雇止めをすることは信義則上許されないものと解するのが相当である(最高裁昭和49年7月22日第1小法廷判決・民集28巻5号927頁参照)。〔中略〕
 前記のとおり、本件雇止めには、解雇に関する法理が類推され、特段の事情がない限り、期間が満了したということだけを理由として雇止めをすることは、信義則上許されないものというべきである。〔中略〕
 しかし、既に説示したとおり、被控訴会社の控訴人らに対する雇止めが信義則上許されるための特段の事情の有無は、当該雇止めの時点において判断すべきところ、被控訴会社が本件雇止めをしたのは、控訴人X12については平成10年4月18日、その余の控訴人らについては平成9年11月20日であるから、前記認定のこの時期における被控訴会社の経営状況に照らせば、被控訴会社について、前記特段の事情があるものとは認められないというべきである。
 (3) 以上のとおりであるから、本件において前記特段の事情があるものとは認められず、他に特段の事情の存在について主張立証がないので、期間が満了したということだけで本件雇止めをすることは、信義則上許されないものというべきであるから、本件雇止めはその効力を生じないものというべきである。したがって、控訴人らの地位確認請求はいずれも理由がある。