全 情 報

ID番号 07776
事件名 地位保全等仮処分申立事件
いわゆる事件名 福田工業事件
争点
事案概要  プラスチック製品の製造販売を業とする株式会社Yの従業員Xが就業中に運搬中の段ボール箱が覆い被さって下腹部に当たり負傷し(第一次負傷)、さらにその約三ヶ月後にはダンボール箱運搬作業中にパレットにつまずいて倒れ、右肘打撲、両膝打撲、右前腕部打撲捻挫の負傷(第二次負傷)をしたため、同日以降出勤しなくなったところ(第二次負傷については労災保険による休業手当及び療養費が支給されたが、第一次負傷については不支給処分とされている)、Yから、業務内容を工場内、事務所での軽作業等とすること、業務に適応しないときは、解雇する旨を通知されたが(その直前に鼡経ヘルニアの手術を受けている)、Xは出社しなかったために解雇されたことから、右解雇は解雇権の濫用により無効であるとして、雇用契約上の権利を有する地位にあることの仮の確認及び未払賃金の仮払を申立てたケースで、右第二次負傷については軽~中程度の労働は可能との診断を受けており、本件解雇通告当時には少なくとも第二次負傷による疾病は、Xの復職を困難とするものではなかったといえるところ、Xは業務との関連は認められない疾病により就労が長期間不可能な状態となったのであるから、就業規則所定(精神もしくは身体上の障害のため業務に耐えられないと認められるとき)に該当するとしてなされた本件解雇は合理的な理由があり、その経緯なども総合考慮すれば、社会通念上相当性を欠くものとはいえないとして、申立てが却下された事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 病気
裁判年月日 2001年6月28日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成12年 (ヨ) 10115 
裁判結果 却下
出典 労経速報1777号30頁
審級関係
評釈論文
判決理由 〔解雇-解雇事由-病気〕
 債権者は、業務との関連が認められない疾病により、平成九年六月一六日以降債務者での就労が長期間不可能な状態となったのであり、平成九年七月二〇日当時の債権者は、債務者の就業規則二七条一の「精神若しくは身体上の障害のため業務に耐えられないと認められるとき」に該当するといえ、本件解雇については合理的な理由があるといえる。
 加えて、債務者は、平成八年一〇月二二日以降、平成九年六月二日に債権者に業務内容の変更を提示したり、同月二〇日に復職要求をするまで約八か月間債権者の欠勤要請を受け入れて来たりしていたこと、他方平成九年六月二日の業務内容の変更の提示については、債権者もこれを一旦了承していたという本件解雇に至る経緯などを総合考慮すると、本件解雇について社会通念上相当性を欠くものとはいえない。
 以上によれば、本件解雇が、解雇権の濫用であるとの債権者の主張は認められない。