ID番号 | : | 07786 |
事件名 | : | 雇用関係確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 外港タクシー(本訴)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一般乗用旅客自動車運送事業を営む株式会社Yでタクシー乗務員として勤務し、全国自動車交通労働組合総連合会長崎地方連合会Yタクシー労働組合の執行委員長X1及び同組合の書記長であったX2が、経営不振であったYとAタクシー会社との間で「商号及び営業譲渡に関する確約書」と題する書面の記載どおりの合意が成立したのに伴い、YからXらを含む全従業員に対しては解雇通知とともに新しい労働条件について説明がなされ、これを了解して就労を希望した者のみ全員Yの従業員として再度採用されていたところ(再雇用後の労働条件は固定給のうち本給額の引下げ、一時金等の引下げ等を伴うものであった)、Xらは本件解雇を了解していたわけでなかったために、採用されなかったことから、本件解雇は不当労働行為又は解雇権の濫用に当たり無効であるとして、雇用契約上の地位の確認及び賃金・賞与の支払を請求したケースで、AとYとの合意の実体は、増資分も含めた全株式をAに譲渡し経営権をAに移転するものであったから、企業廃止のように、性質上従業員全員の解雇を必須とするものではなく、本件合意に至る経過をみても、解雇回避の再建策を検討した形跡がなく、AないしAの親会社の意向に従って漫然と従業員全員の解雇と再雇用と決定しており、またYは労働条件の引下げのみを目的として全従業員を解雇したものといわざるを得ず、本件解雇は解雇権の濫用に当たり、無効として、請求が一部認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法11条 労働基準法89条1項3号 民法536条2項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 営業譲渡に伴う解雇 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 2001年7月24日 |
裁判所名 | : | 長崎地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 34 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例815号70頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-解雇事由-営業譲渡に伴う解雇〕 本件合意の実体は、本件確約書の表題とは異なり、増資分を含めた全株式をAタクシーに譲渡して経営権を同社に移転するものであったから、企業廃止のように、性質上従業員全員の解雇を必須とするものではなかった。本件合意に至る経過をみても、被告において従業員の解雇を避けるような再建策を検討した形跡は全くなく、むしろ、Aタクシーないしその親会社であるB会社の意向に従って、漫然と従業員全員の解雇と再雇用を決定している。その上、再雇用にあたっては、従前より引き下げられた労働条件を承諾した者だけを採用しており、被告は、労働条件の引下げのみを目的として従業員全員を解雇したものといわざるを得ない。以上の事情に照らすと、被告の経営状態が苦境にあったことを考慮しても、なお、本件解雇は解雇権を濫用したものというべきである。 ロ 以上によると、本件解雇は無効であるから、労働契約上の権利を有する地位の確認請求は理由がある。〔中略〕 〔賃金-賃金請求権の発生-無効な解雇と賃金請求権〕 本件解雇は無効であるから、原告らは民法536条2項に基づいて給与及び一時金の請求権を失わないところ、上記のとおり、被告では賃金体系が変更されているが、これは労働条件の不利益変更であってその変更に合理性があると認めるに足りる証拠はないから、原告らは従前の賃金体系に基づく賃金請求権を有すると解する。 |