ID番号 | : | 07797 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 中川印刷事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | グラフィックデザイン等の企画制作等を主たる業とする株式会社で同族会社であるYに営業職として入社し、経理業務以外の業務全般及び社員の印刷教育を担当するようになっていたXは、社内で暴言を吐くことがあり、他の従業員や役員とも関係がうまく行かないことが多く、また交通事故により受傷したがその症状も固定していたにもかかわらず早退が多く勤務に問題があったところ(医師はXは通常業務に耐えられるとの説明をしている)、顧客からの問合わせの件で管理部長や社長に対して暴言を吐いたため、自宅謹慎処分(賃金も減額)にされたが、謹慎処分中であるにもかかわらず、これに反して特段の事情もないのに出勤して会社のファックスを使用して個人的な文書の送付に利用したり、会社の得意先に迷惑をかけるような行動をしたり、業務上の必要がないのにガソリンスタンドで給油してその費用を会社に負担させたため、Xの行為は就業規則の懲戒解雇事由に該当するとして、解雇されたことから、右解雇の無効を主張して、労働契約上の地位確認及び賃金支払等を請求したケースで、本件解雇は有効であるとしたうえで、本件解雇につきYは予告手当を支払っていないが、即時解雇に固執する趣旨ではないと認められるとして、解雇の意思表示から三〇日経過するまでについては賃金請求が認められるとされ、さらに右自宅謹慎処分はYの業務命令によりなされたものであり違法ではないが、同処分中に賃金を支払わないとの措置に合理的な理由があるともいえないとして、賃金減額については根拠がなく無効であるとして、謹慎処分に伴う賃金減額分について請求が一部認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 労働基準法19条 労働基準法2章 労働基準法20条1項 民法1条3項 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務妨害 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒手続 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 自宅待機命令・出勤停止命令 解雇(民事) / 解雇制限(労基法19条) / 解雇制限と業務上・外 解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力 |
裁判年月日 | : | 2001年8月24日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 9445 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却 |
出典 | : | 労経速報1785号47頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒事由-業務妨害〕 上記(一)記載のとおり、被告が、原告の勤務状況が良好でないこと、原告の被告における言動に問題があり、また、本件自宅謹慎処分に反し、さらには被告に無断で業務上の必要もないのに給油等をしてその費用を負担させたことは、被告主張の懲戒解雇事由に当たるというべきであり、この点において、本件解雇は理由がある。〔中略〕 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒手続〕 原告は、本件解雇は、本件解雇に至る経緯において、手続の適正を欠き、本件解雇は無効であると主張する。 しかし、上記認定事実、(証拠略)によれば、被告において、本件解雇にあたって懲戒委員会が開催されていることが認められ、これを覆すに足りる証拠はない。また、原告本人によれば、原告は、本件自宅謹慎処分があった時点で、自分の進退が問題となっていることを認識して弁護士に相談したいと考えていたこと、懲戒委員会の開催自体はともかく、自分の進退に関することで平成一二年五月二三日に来社するように指示があったことを認識していること、同月二二日には被告の弁護士に架電をし、弁護士に相談する旨を述べていること、それにも関わらず、自らの意思で被告の指示に従わずに来社しなかったことが認められるのであって、被告は本件解雇に至る過程で、原告に対して弁解の機会を与えており、原告もこれを認識していたといえるから、本件解雇は、手続的に適正を欠くものということはできない。〔中略〕 〔労働契約-労働契約上の権利義務-自宅待機命令・出勤停止命令〕 本件自宅謹慎処分は、業務命令として発せられたものであって、被告就業規則第九一条(3)で規定されている懲戒処分としての出勤停止処分ではないと認められる。懲戒処分としての出勤停止とは別個に、解雇や懲戒解雇の前提措置等として就業を禁止する出勤停止の措置や、使用者が従業員を出勤ないし就労させるのが不適当と認める事情がある場合におこなわれる出勤停止ないし自宅待機の措置を使用者が業務命令として行うことは、労働者には就労請求権が認められていないと解されるから、使用者が従業員に賃金を支払い、そうした業務命令を発するに相当の事由が存在する場合は、就業規則にその旨の明示の根拠がなくても、使用者にそのような命令を発する権限が認められるのであり、被告が原告に対してした本件自宅謹慎処分も業務命令として何ら違法ではない。〔中略〕 〔解雇-解雇制限(労基法19条)-解雇制限と業務上・外〕 原告は、本件解雇は、原告は業務上の災害で療養治療中に本件解雇がされており、労働基準法一九条一項の趣旨に反するものであって、この点からも本件解雇は解雇権の濫用であったと主張する。 (書証略)によれば、本件交通事故による原告の受傷が業務上の災害であることを被告も認めていることが認められるが、しかし、上記認定事実に記載のとおり、原告は、遅くても平成一二年四月一二日までには症状が固定していたから、本件解雇は、労基法一九条一項の趣旨に照らしても、許されないものということはできない。〔中略〕 〔解雇-労基法20条違反の解雇の効力〕 解雇予告手当の支払いがないことをもって解雇自体が当然に無効となると言うことはできず、解雇予告手当の支払いのない解雇は即時解雇としては効力を有しないが、使用者が即時解雇に固執する趣旨でないときは、解雇から三〇日の期間を経過するか、あるいは通知後に予告手当の支払いをしたときは、そのいずれかの時から解雇の効力が発生すると解されるところ、本件において、弁論の全趣旨によれば、被告は必ずしも即時解雇に固執する趣旨ではないと認められるから、本件解雇は無効ではなく、平成一二年五月二三日から三〇日を経過した同年六月二二日に懲戒解雇としての効力が発生するものと解すべきである。 |