ID番号 | : | 07800 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 関西医科大学研修医(損害賠償)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 医科大学を設置・運営する学校法人Yの大学を卒業後、Y設置の付属病院に臨床研修医として所属し死亡したAの両親Xが、Aの研修内容は概ね七時半頃に登院し、九時から一六時ごろまで指導医の指示のもと患者の問診、点滴、見学等を行い、一八時までの自己研修の後、一九時頃終了するというものであったが、指導医の診療の補助、手術の立会いもあり、通常の退出時刻は二二時頃で、休日も指導医が出勤すれば登院し、また指導医の当直日に副直として院内待機することとなっており、Aは死亡前の二ヶ月間については四日間を除き登院して、通常一一~一六時間も病院内で研修ないし関連作業に従事していたこと(この期間中奨学金月額6万円、宿直・日直につき一回一万円)から、Aは病院の指揮の下で勤務する労働者であり、私立学校教職員共済法一四条にいう「使用される者」であったにもかかわらず、Yは共済制度の加入手続きを怠ったとして、Aが加入できていれば受給できるはずの遺族共済年金分の損害賠償の支払を請求したケースで、Aは労働基準法九条にいう「労働者」に該当し、それと同義である私立学校教職員共済法一四条にいう「使用される者」に該当するとしたうえで、Yが研修医を同制度に加入させなかったことは違法であり、過失がないとはいえないとして請求が一部認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 私立学校教職員共済組合法14条1項 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 研修医 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 労働者の概念 |
裁判年月日 | : | 2001年8月29日 |
裁判所名 | : | 大阪地堺支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 1269 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例813号5頁/第一法規A |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | ・労政時報3514号78~79頁2001年11月9日/岡崎守延・賃金と社会保障1313・1314号121~123頁2002年1月25日/吉田美喜夫・法律時報75巻2号118~121頁2003年2月/森戸英幸・ジュリスト1233号134~137頁2002年11月1日/水島郁子・賃金と社会保障1333号68~73頁2002年11月10日 |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-労働者の概念〕 労働基準法が労働法規における一般法であることからすると、私立学校教職員共済法14条1項本文にいう「使用される者」は、労働基準法9条にいう「使用される者」と同義に解するのが相当であるから、私立学校教職員共済法14条1項本文にいう「使用される者」に該当するか否かは、「労働者」(労働基準法9条)に該当するか否かによって判断されるのが相当である。 そして、「労働者」に該当するか否かの判断に当たっては、(イ)仕事の依頼、業務従事への指示等に関する諾否の自由の有無、(ロ)業務遂行上の指揮監督の有無、(ハ)場所的・時間的拘束性の有無、(ニ)労務提供の代替性の有無、(ホ)業務用器具の負担関係、(ヘ)報酬が労働自体の対償的性格を有するか否か、(ト)専属性の程度-他の業務への従事が制度上若しくは事実上制約されているか、(チ)報酬につき給与所得として源泉徴収を行っているか等を総合的に考慮して判断されるべきである。〔中略〕 〔労基法の基本原則-労働者-研修医〕 前記認定によれば、Aら研修医は、本来的には、臨床研修において、医学的知識と技術、医師のあるべき姿勢、態度等を学ぶことを目的としており、その意味においては、いかに研鑚を深めるか等につき、自らの自発性に委ねられるところがあることは否定できないところであるが、被告病院において、Aは、指導医が診察する際に、その診察を補助するとともに、指導医からの指示に基づいて、検査の予約等をしており、指導医と研修医との間に業務遂行上の指揮監督関係が認められること、平日(月曜日から金曜日)午前7時30分から午後7時までの研修時間中においては、研修医に指導医からの指示に対する諾否の自由が事実上与えられていなかったこと、月曜日から金曜日は午前7時30分までに被告病院に赴き、入院患者の採血を開始し、午後7時ころに入院患者への点滴が終了するまでは被告病院におり、土曜日及び日曜日についても、午前7時30分までには被告病院に赴き、入院患者の採血や点滴をしており、場所的・時間的拘束性が認められること、業務用器具についてはいずれの作業も被告病院の器具を用いること、被告は研修医に対して6万円及び当直手当相当額の金員を支給していること、被告病院における研修内容及び拘束時間に照らせば、Aら研修医は、事実上、他の業務への従事が制約されていること、Aが被告から支給を受けた金員は、給与所得として源泉徴収がなされていることが認められ、これらの事情を総合して検討すれば、Aら研修医は、研修目的からくる自発的な発意の許容される部分を有し、その意味において特殊な地位を有することは否定できないが、全体としてみた場合、他人の指揮命令下に医療に関する各種業務に従事しているということができるので、Aは労働基準法9条にいう「労働者」に該当すると認められる。 したがって、Aは、「使用される者」(私立学校教職員共済法14条1項本文)に該当すると認められる。 |