ID番号 | : | 07802 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | アメリカン・スクール事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 在日アメリカン人の子弟の小中学校及び高等教育を行う学校Yの学校内外の掃除等を業務内容とする施設管理部の部長の地位にあったXが、学校の出入業者から仕事発注の見返りに長期にわたり多額の謝礼を受け取ったり、また管理部用務係主任のリベート受領を知りつつ放置していたところ、「Yの取引業者から多くの贈答品を許可なく受け取ったことが就業規則に違反し、懲戒処分とする」などの内容が記載された英文の通知文書により施設管理部長から新設の建物及びグランド管理アシスタント・マネージャーに降格されるとともに減給されたことから、右懲戒処分の無効を主張して、施設管理部長たる地位の確認と、差額賃金及び差額賞与等の支払を請求したケースで、Yの就業規則には懲戒処分として降格の規定はないからYは懲戒処分として降格処分を行うことはできないが、人事権の行使として降格処分を行うことは許され、またYでは地位、能力を考慮して決定されることになっている給料も、降格処分に応じて減給することも許されるとしたうえで、本件処分は人事権の行使としてなされたものと認められ、Xには掃除等の業務を委託する業者を適正に選択し監督する能力資質、部下に対する指導監督する能力及び適正な情報管理を行う能力等、Y施設管理部長として要求される能力資質についていずれも重大な疑問を抱かせる事実が認められるとして、本件各処分には十分な理由があり、減給処分も本件降格処分に伴う相当な範囲を超えるものではないとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 人事権 / 降格 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒権の根拠 |
裁判年月日 | : | 2001年8月31日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 5515 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例820号62頁/労経速報1778号25頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇-懲戒権の根拠〕 懲戒処分は企業秩序維持のための労働者に対する特別な制裁であることから、それを行うについて契約関係における特別の根拠が必要とするのが相当であり、就業規則上の定めが必要と解される(労働基準法八九条一項九号参照)。したがって、使用者が、懲戒処分として降格処分を行うには、就業規則上懲戒処分として降格処分が規定されていなくてはならない。被告においては、前示第二の1(3)のとおり、就業規則上懲戒処分として降格の規定はないから、被告は、懲戒処分として降格処分を行うことはできない。〔中略〕 〔労働契約-人事権-降格〕 他方、法人は、特定の目的及び業務を行うために設立されるものであるから、この目的ないし業務遂行のため、当該法人と雇用関係にある労働者に対し、その者の能力、資質に応じて、組織の中で労働者を位置付け役割を定める人事権があると解される。そして、被用者の能力資質が、現在の地位にふさわしくないと判断される場合には、業務遂行のため、労働者をその地位から解く(降格する)ことも人事権の行使として当然認められる。したがって、降格処分についての就業規則に定めがない被告においても、人事権の行使として降格処分を行うことは許される。 そして、前示第二の1(4)のとおり被告の給与・退職金規定の第9条に各従業員の給料は、地位、能力を考慮して決められる旨の定めがあることからすれば、被用者の降格処分に応じて減給することも許される。 ただし、この人事権の行使は、労働契約の中で行使されるものであるから、相当な理由がないのに、労働者に大きな不利益を課す場合には、人事権の裁量逸脱、濫用として無効となるとするのが相当である。〔中略〕 以上の各事実は、清掃等の業務を委託する業者を適正に選択し監督する能力資質、部下に対する指導監督する能力及び適正な情報管理を行う能力等被告施設管理部長として要求される能力資質について、いずれも重大な疑問を抱かせる事実であるから、被告が原告を施設管理部長の職には不適格としその職位を解くことに十分な理由がある。 オ そして、本件降格処分は、原告を被告の従業員格付表の第一表事務系における八等級のマネージャーにあたる施設管理部長からその二段階下のアシスタントマネージャーにあたる建物及びグラウンド管理アシスタントマネージャーへ降格するものであるところ、この降格はイ及びエで認定した事実に照らして相当な程度を超えないというべきである。 |