ID番号 | : | 07803 |
事件名 | : | 退職金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | プラスエンジニアリング事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 高給金型部品の製造・販売を業とする株式会社Yに約一ヶ月後に退職する旨の退職届を提出したが、Yから退職を承認してもらえず、後任者を決定してもらえなかったために、後任者への業務の引継ぎを行うことができず、そのまま退職したXが、Yの退職金規程には、在職中の行為で懲戒解雇に相当するものが発見されたときは退職金を支給しないとの規定があり、また退職希望日の三カ月前までに退職届の提出を義務づける規定があったところ、後任者の引継ぎなしに退職したことは懲戒解雇に相当するものであることなど、退職手続違反等を理由に退職金の支払を拒まれたため、退職金規定に基づく退職金及び未払賃金の支払いを請求したケースで、Yからは具体的な懲戒解雇事由についての立証がなく、また期間の定めのない雇用契約においては労働者は二週間の予告期間を置けばいつでも解約することができるところ、Xが三カ月前までに退職届の提出を義務づける就業規則の規定に違反しても、Yが退職金の支給を拒む根拠にはならず、また引継ぎができなかった原因はYが退職を承認しなかったためであることなどからして、Yは退職金不支給規定があることを理由に退職金の支払を拒むことはできないとして、請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法89条1項3号の2 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 |
裁判年月日 | : | 2001年9月10日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 15091 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労経速報1791号18頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 被告の退職金規定には、在職中の行為で懲戒解雇に相当するものが発見されたときは退職金を支給しないとの規定があるが、具体的な懲戒解雇事由についての主張立証はない(書証略によれば、被告の就業規則には解雇事由の規定はあるが、懲戒解雇事由の規定のないことが認められる)。 (2) 期間の定めのない雇用契約においては、労働者は二週間の予告期間を置けばいつでも契約を解約することができる(民法六二七条一項)。原告は、平成一一年一月一三日ころ、直属の上司に同年二月一五日を退職希望日とする退職届けを提出し、同年一月一八日にも被告代表者に直接退職の意向を伝えることにより解約を予告したから、同年二月二四日限りで雇用契約は有効に終了する。退職届けを提出してから退職するまでの間に原告の業務を後任者に引き継ぐことを困難とする事情を見いだすことはできない。そうすると、退職希望日の三か月前までに退職届けの提出を義務づける就業規則の規定に原告が違反したことは、退職金の支給を拒む根拠にはならない。 原告は、後任者への業務の引継ぎを行わなかったが、その主な原因は、被告が原告の退職を承認していなかったことによるものであるから、これを原告の責めに帰することはできない。 前記1で認定した事実によれば、原告がA社に対する売掛金の管理において基本的な責務を果たしていなかったとはいえないし、その他に、被告の主張する事実を認めるに足りる証拠はない。 (3) したがって、被告は、退職金不支給規定があることを理由に退職金の支払を拒むことはできないし、退職金の不支給を相当とする事情は認められないから、その余の点について判断するまでもなく、被告の主張は理由がない。 |