ID番号 | : | 07804 |
事件名 | : | 地位確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 全国社会保険協会連合会・地位確認等請求事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 病院等を経営する社団法人全国社会保険協会連合会Yにパートタイム看護婦(実働六時間)として雇用期間を一年と定めて雇用されていたXが、所属する労組とYの病院との交渉後、さらに雇用期間六ヶ月とする労働契約を更新し、さらに「これで最後やからね」と言われたものの、交渉が進展せず、再度雇用期間六ヶ月をする契約を締結したが、期間満了約一ヶ月前に契約更新しない旨の予告がなされ雇止めされたところ、Yの病院ではパートタイム看護婦であっても正規職員と同様の専門知識・技術等が必要であり、また多数のパートタイム看護婦は雇用期間六ヶ月又は二カ月とされていたものの期間満了により雇止めされたものがいなかったことから、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認及び賃金の支払を請求したケースで、Xが期間満了後の雇用継続を期待することに合理性があり、解雇権濫用法理が類推適用されるところ、本件雇止めは期間満了のみを理由とするものであって、客観的に合理的な理由があるとは言い難く、信義則上許されないというべきであるとして、請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法14条 労働基準法2章 民法1条2項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 2001年9月10日 |
裁判所名 | : | 京都地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 3087 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部却下(控訴) |
出典 | : | 労働判例818号35頁/労経速報1788号8頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 原告と被告との間の労働契約は、実質的に見て期間の定めのない契約に当たるということはできないが、原告に雇用継続に対する合理的な期待があり、解雇に関する法理が類推適用されるというべきである。すなわち、原告は、被告との間で、期間の定めのある労働契約を締結したのであるが、期間満了後の雇用継続に関する被告側の採用面接時の説明、原告の職務内容の正規職員看護婦との異同、契約更新に至った経緯、被告側の更新時の説明、他のパートタイム看護婦に対する雇止めの実例の有無、被告病院の外来の本件雇止め後の状況等の諸事情を勘案すると、原告が期間満了後の雇用継続を期待することに合理性があるということができ、この期待は法的保護に値するものであるから、原告に対する雇止めには解雇に関する法理が類推適用され、単に労働契約の期間が満了したというだけでは雇止めは許されず、客観的に合理的な理由が必要であり、これを欠く雇止めは社会通念上相当として是認することができないといわなければならない。ところが、本件雇止めは、期間満了のみを理由とするものであって、客観的にみて合理的な理由があるとはいい難いので、信義則上許されないものというべきである。〔中略〕 被告は、Aが同年10月初めころ「これで最後やからね」と言って原告に契約書への署名を求め、原告もこれに応じて署名したのであるから、原告は平成12年3月31日限り契約が終了することを明確に認識していた旨主張しているが、原告は、平成11年3月5日にAから言われたとおり、契約書の雇用期間は形式上のもので、これをもって辞めさせられることはないと信頼していたにもかかわらず、前記のとおり「これで最後やからね」というAの発言があったため、直ちに契約書に署名せず組合に相談したというのであるから、Aの前記発言があったとしても、なお期間満了後の雇用継続に対する原告の期待は合理的なものであったということができる。 これに関し、被告は、当事者の一方が期間満了後の雇用継続を期待しただけで、当事者双方の合意した期間の定めが事後的に覆されるというのは、契約自由の原則に照らして問題がある旨の主張をしているが、前記のとおり、原告が単に主観的、一方的に期間満了後の雇用継続を期待していたに過ぎないのではなく、周囲の事情に照らしても、原告の前記期待に合理性があると認められる場合には、信義則上その合理的な期待を保護すべきであると考えられるので、被告の前記主張は採用することができない。 本件雇止めが信義則上許されない結果として、期間満了後における原告と被告との間の法律関係は、従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解すべきである。したがって、原告は、被告に対し、パートタイム看護婦として労働契約上の権利を有する地位にあるということができる。 |