ID番号 | : | 07813 |
事件名 | : | 仮処分認可決定に対する保全抗告事件 |
いわゆる事件名 | : | 全国社会保険協会連合会(仮処分保全抗告)事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 病院等を経営する社団法人全国社会保険協会連合会Yにパートタイム看護婦(実働六時間)として雇用期間を一年と定めて雇用されたXが、期間満了による契約終了に異議を唱えたため、加入していた組合とYの経営する病院との交渉後、一年後には止めてもらう旨が述べられつつ、期間を六ヶ月とする契約が締結され、さらに「これで最後やからね」と言われたものの交渉が進展しないまま、再度雇用期間六ヶ月とする労働契約を締結したが、期間満了により雇止めされたところ、Yの病院では多数のパートタイム看護婦は正規職員と同様の専門知識・技術が必要であり、また雇用期間六ヶ月又は二カ月とされていたものの期間満了により雇止めされたものがいなかったこと事情等があったことから、労働契約上の権利を有する地位にあることを仮に定めること及び賃金の仮払いを求めたケースの抗告審で、本件雇止めを無効とした仮処分決定及び異議立決定とは異なり、YはXに対して雇用継続を期待させるような言動はしておらず、Xの規定の合理性は認め難く、解雇法理の類推適用はなく、期間満了を理由とする本件雇止めは有効であるとして、Yの抗告が認容されXの請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 労働基準法14条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 2001年10月15日 |
裁判所名 | : | 大阪高 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 平成13年 (ラ) 288 |
裁判結果 | : | 原決定取消、仮処分命令申立却下 |
出典 | : | 労働判例818号41頁/労経速報1788号3頁 |
審級関係 | : | 一審/07715/京都地/平13. 2.13/平成12年(モ)1743号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇-短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 平成10年2月、平成11年3月、同年10月に相手方と抗告人との間で締結された各労働契約は、期間の定めのある労働契約であると認められる。この期間の定め自体が適法であることは明らかであり、かかる労働契約が反復更新されたからといって、当然にその適法性が否定されることにはならないし、期間の定めのない労働契約に変化するものでもない。 もっとも、期間の定めのある労働契約であっても、期間満了後も雇用が継続されるものと労働者が期待することに合理性が認められる場合には、使用者の雇止めは実質的に解雇と同視され、解雇の法理が類推適用されると解すべきであり、したがって、雇止めには合理的な理由が必要となるというべきである。そして、労働者が雇用の継続を期待することに合理性が認められるか否かの判断は、当該雇用の臨時性・常用性、従事する業務の内容、更新の回数、更新の際の経緯、雇用継続の期待を持たせる使用者側の言動等の諸事情を総合的に考慮して行うべきである。 本件においてこれをみるに、A病院のパートタイム看護婦は、正規職員看護婦より勤務時間が短いことを除けば、正規職員看護婦と同様の勤務をし、責任を負担していたこと、必ずしも期間満了によって雇止めされるとは限らず、契約の更新を重ねてきた者がいたことは、前記認定のとおりであり、これらの事実は、相手方が期間満了後の雇用継続を期待することに合理性があるとする1つの根拠となり得るものである。しかし、他方において、Bは、平成11年3月5日に改めて労働契約書(甲17)を取り交わした際、相手方に対し、「同年4月から平成12年3月まで契約する、ただし、6か月毎の契約として同年3月末日で辞めてもらう。」と告げているのであって、相手方がこれを聞きながら、なお期間満了後も雇用を継続してもらえるとの理解のもとに、甲17に署名したとみることには無理があるといわなければならない。相手方は、Bの上記発言があったことを否定するが(乙15)、Bが平成11年10月、新たな労働契約書への署名を求める際に「これで最後やからね」と念を押していること(これは、相手方も認めている。)に照らせば、上記発言はあったものと推認するのが自然である。また、相手方は、Bに「これで最後やからね。」といわれ、直ちに署名せず、組合に相談し交渉してもらったものの、その交渉が進展しないため、やむなく雇用期間を平成11年10月1日から平成12年3月31日までとする労働契約書(乙8)に署名したものであり、この経緯に照らすと、乙8に署名する際、相手方が期間満了後も雇用が継続されると認識していたとみることは、前同様困難というべきである。かえって、その後、相手方が婦長のCに対し、平成12年4月以降は正規職員看護婦として働きたいと申し入れ、採用試験を受けたことは、相手方自身、同年3月で期間が満了し、雇用継続はされないとの認識を有していたことを窺わせるものである。さらに、採用面接の際、Dが他のパートタイム看護婦は契約が継続されて長年勤務している旨の説明をした事実、平成11年3月5日にBが雇用期間は形式上6か月となっているが、これは形式上のものでこれをもって辞めさせることはない旨の説明をした事実がいずれも認められないことは(2)で説示したとおりであって、抗告人側に雇用継続の期待を持たせる言動があったということもできない。 以上の諸事情を総合考慮すれば、相手方が期間満了後の雇用継続を期待することに合理性があったとは認め難いといわざるを得ず、本件雇止めに解雇の法理を類推適用する余地はないと解される。 |