ID番号 | : | 07815 |
事件名 | : | 損害賠償等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 東豊観光事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一般旅客自動車運送事業を目的とする株式会社Yに乗務員として勤務する従業員で、Yの従業員で構成する労働組合の組合員であったXら七名が、Yは三度にわたり組合及び組合員に対し希望退職の募集及び基本給の減額を提案したものの、〔1〕売上の急激な落込みによる経営の悪化を理由に賃金減額措置を実施した(二三ヶ月間で約五九万から約一一六万円)ことから、右減額措置による労働条件の引下は合理性がなく無効であるとして未払賃金の支払を、また〔2〕Xらのうち五名については、約五年間にわたり精勤手当及び賞与に著しい組合間格差があるが、これは代表取締役Y1の組合嫌悪の不当労働行為によるものであるとして、Y会社に対しては民法四四条、商法二六一条の三項・七八条二項に基づき、Y1に対しては商法二六六条の三第一項に基づき、その差額相当額の損害賠償、慰謝料等の支払を請求したケースで、〔1〕については就業規則上は、基本給についてYの一方的な意思表示によってこれを減額できるという規定やその減額につきYに裁量を与えた規定はないこと等から、本件減額措置はこれを有効とすることができないとして請求が認容され、〔2〕については、Y1が組合員に経済的不利益を与えることにより組合の弱体化を企図したものであり、不当労働行為に該当するとして、Y1及び会社Yは連帯して損害賠償責任を負うとして請求が一部認容 (なおXらのうち一名については勤務成績が低いことから精勤手当における賃金格差は不当労働行為によるものではないとして請求が棄却)された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法11条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額 |
裁判年月日 | : | 2001年10月24日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成11年 (ワ) 13623 |
裁判結果 | : | 一部認容、一部棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例817号21頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額〕 被告会社は、本件賃金減額措置について、その就業規則、乗務員給与規則の範囲内で実施した旨主張するところである。その趣旨は、本件賃金減額措置による基本給や手当の額が、就業規則、乗務員給与規則に規定する最低額以上の額に納まっているということであると理解されるが、賃金は、労働契約の内容であるから、それが就業規則の規定する最低額を超えているとしても、契約の一方当事者である使用者に変更権限がない以上、使用者が相手方の承諾なく、一方的にこれを変更することはできないというべきである。そして、被告会社の就業規則、乗務員給与規則上、基本給について、満55歳に達した場合を除けば、被告会社の一方的な意思表示によってこれを減額できるという規定やその減額について被告会社の裁量を与えた規定はない。また、各種手当についても、それがそれぞれの支給要件の充足の有無又は支給原因の変更によって減額となる場合は生じるものの、経営上の都合によって一方的に減額できるかどうかについては、就業規則、乗務員給与規則の規定するところではない。 2 被告会社は、倒産しかねない経営危機下では、必要性があれば、一方的に賃金を減額することも許される旨主張するところ、使用者と労働者個人との契約関係は、経営危機があるとしても、その内容を相手方の同意なしに変更することができるとする法理はない。 以上によれば、本件賃金減額措置はこれを有効とすることはできず、被告会社は、これによって支払わなかった賃金減額分、すなわち前提事実6(二)記載の金額及びこれに対する遅延損害金の支払義務がある。 |