全 情 報

ID番号 07817
事件名 損害賠償請求上告事件
いわゆる事件名 全税関神戸支部事件
争点
事案概要  神戸税関の職員であり全国税関労働組合神戸支部X1の組合員X2ら一〇九名が、昭和三八年から昭和四九年にかけて神戸税関長から、組合X1の組合員であることを理由に、昇任、昇格、昇給につき不当な差別的取扱いを受け、これにより経済的、精神的損害を被ったとして、国に対し、国家賠償法一条一項に基づき、本件係争期間中に生じた右損害の賠償を請求し、またX1がその組合員が右のような不当な差別扱いを受け団結権を侵害されたことにより無形の損害を被ったとして、国家賠償法一条一項に基づき、損害賠償を請求したケースの上告審で、最高裁は、Xらの請求を棄却した一審と同様に、X1の組合員らは、任用時期及び任用資格を同じくする非組合員と比較して昇任等に遅れが生じ給与格差があるが、X2らは正当な組合活動とはいえない非違行為を行っており、これが勤務成績において考慮されたのは当然のことであるから、神戸税関長が裁量権の範囲を超え、これを濫用した違法な取扱いをしたとは認めることはできず、また当局が全税関組合員を差別扱いする統一的な方針を有していたと推認することができないなどとして、Xらの控訴を棄却した原審の判断を相当として、Xらの上告を棄却した事例(なお、X1組合の国に対する上告を棄却した多数意見に対し、裁判官の反対意見あり)
参照法条 国家賠償法1条
労働基準法3条
体系項目 労基法の基本原則(民事) / 均等待遇 / 信条と均等待遇(レッドパージなど)
賃金(民事) / 賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額
裁判年月日 2001年10月25日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 平成9年 (オ) 593 
裁判結果 棄却(確定)
出典 労働判例814号43頁
審級関係 控訴審/06870/大阪高/平 8.10.29/平成4年(ネ)694号
評釈論文
判決理由 〔労基法の基本原則-均等待遇-信条と均等待遇(レッドパージなど)〕
〔賃金-賃金請求権と考課査定・昇給昇格・降格・賃金の減額〕
 東京税関文書の記載に照らし、これのみにより神戸税関における当局の差別意思までは認定することができないとした原審の前記2(10)の認定判断は、是認するに足り、その過程に所論の違法があるとはいえない。また、関税局文書の記載は、所論のように理解することも十分に可能ではあるものの、正当な理由に基づいて生じた格差があまりにも大きくなったのでこれを縮小するための方策につき協議したものであると理解することもできないではない上、上席官昇任について異なる基準があったという事実は、上席官が昭和52年に新設された官職であることがうかがわれることに照らすと、それ以前にまでさかのぼるものではないことなどにかんがみれば、原審の同(11)の関税局文書の理解が経験則等に反する誤ったものであると直ちに断ずることはできない。そして、神戸税関固有の事実に関する同(3)ないし(9)の原審の認定判断が是認し得るものであることは前記のとおりであるから、他に神戸税関当局の上告人組合ないし上告人組合員に対する差別ないし差別意思をうかがわせる事実が原審により確定されていない本件においては、以上の事実関係を総合しても上記差別ないし差別意思を認めるには足りないとした原審の判断は、是認することができる。