ID番号 | : | 07821 |
事件名 | : | 破産債権確定請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 破産者駸々堂破産管財人事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 書籍等の販売等を目的とする株式会社であったが平成一二年に破産宣告を受けたYの元従業員で、Yの破産申立時に存在していたA組合の組合員であったXら一七名が、〔1〕別組合であるB組合とYとの間に昭和五六年に締結された退職金協定に基づいて算定した退職金及び〔2〕旧就業規則に基づいて算定した休日勤務手当について(旧就業規則では基本給と諸手当を基礎賃金額としこれを係数二二で除する旨定められていたが、新就業規則及び新賃金規則では、基礎賃金額の対象から社会保険負担手当と食事手当が除外されているとともに、これを除する係数が二三とされていたが、Xらはこの新規定の適用を拒否していたことから割増賃金の算定は旧就業規則に基づいてなされていた)、それぞれ破産債権の届出をなしたところ、破産管財人となっているYが異議を述べたため、これらの債権の確定を請求したケースで、A組合とYとの間には退職金について労働協約の締結に至っておらず、さらにYとB組合との間で結ばれた退職金協定と同内容の協定が締結されたと認めることができず、またXらには未だ新就業規則によって賃金が支払われたことがないというだけでこれをXらに適用できないということはできないところ、新就業規則は休日勤務手当の計算方法について不利益に変更するものであるが、実質的に従業員にさほど大きな不利益を与えるものではなく、経営不振を背景に合併したという状況下で労働条件を統一的に処理する必要があったことからすると合理性を有するものであるから、Xらにも旧就業規則ではなく、新就業規則が適用されるとして、請求が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 労働組合法14条 労働組合法16条 労働基準法11条 労働基準法93条 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職金請求権および支給規程の解釈・計算 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / その他 |
裁判年月日 | : | 2001年11月7日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 12748 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働判例819号46頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職金請求権および支給規程の解釈・計算〕 原告X1外4名は、本件退職金協定の内容が、当事者の合理的意思解釈によれば、同原告らの労働条件となっていると主張する。 しかしながら、労働協約が、労働協約の当事者である労働組合を脱退した者の労働契約を外部から規律することはなく、労働契約当事者の合理的意思が労働組合脱退後も当該労働協約に定める労働条件を労働契約の内容に取り込んで存続させることにあると認められる場合に限り、労働協約に定める基準が労働契約の内容になるにすぎないものと解するのが相当である。 そして、本件退職金協定は旧就業規則における退職金支給規定の内容を書店労組の組合員にのみ優遇する内容であって、破産会社において、書店労組を脱退した者にまで本件退職金協定を適用するとの合理的意思があったと推認するのは困難であるし、破産会社が、会社都合退職の場合に、退職金を50パーセント割増するとの規定を含む新就業規則及び退職金支給規定の適用を同原告らに対しても申し入れ、これを撤回したとは認められないこと、現実に本件退職金協定を適用したことはないこと、といった事情も考慮すれば、少なくとも破産会社が本件退職金協定の内容を原告X1外4名の労働条件とするとの合理的意思を有していたとは認められず、同原告らは就業規則に基づく退職金請求権のみ有するというべきである。〔中略〕 〔就業規則-就業規則の一方的不利益変更-その他〕 新就業規則は、休日勤務手当の基礎賃金額の対象から社会保険負担手当及び食事手当を除外し、右対象に含まれる賃金の額を除する係数を22から23に増加したもので、これによって休日勤務手当を算定するための単価が減額となる。そこで、新就業規則は、休日勤務手当の計算方法について不利益に変更したものということができる。 旧就業規則における食事手当は出勤1日に対して200円を支給するというものであるから、社会保険負担手当との合計額は、1か月当たり概ね1万7000円から2万7000円程度であり(〈証拠略〉)、1時間当たり110円から175円の減額となる。また、右の係数を22から23に増加した点については、単価を506分の1引き下げるものである。新就業規則は、これが食事手当及び社会保険負担手当を廃止した点は従業員の賃金を相当程度減額するものであるし、住宅手当は既婚世帯主については有利に変更されているが、独身者には不利に変更され、残業食事手当の創設、会社都合による退職の場合の退職金の支給率の増率を考慮しても、全体としては、不利益変更の度合いは少なくない。しかし、休日出勤手当に関していえば、労働者に休日出勤の義務があるわけではなく、またさほど残業を行っていない(〈証拠略〉)ことからすれば、従業員に実質的にさほど大きな不利益を与えるものではない。そして、新就業規則が、経営不振を背景に合併をしたという状況の下で、合併に伴い労働条件を統一的に処理する必要があったことからすると、新就業規則の休日勤務手当の計算方法の変更は、合理性を有するというべきである。 以上によれば、破産会社による休日勤務手当の基礎賃金額の算定に関する新就業規則への変更は有効であり、休日出勤未払賃金の算出にあたって、旧就業規則及び賃金規則に依るべきであるという原告らの主張は理由がない。 |