全 情 報

ID番号 07822
事件名 懲戒処分無効確認等、損害賠償、地位確認賃金支払請求控訴事件
いわゆる事件名 岡惣事件
争点
事案概要  生コンクリート製造販売業等を営む株式会社Yの従業員であるX1ら一八名が全日本建設運輸連帯労働組合支部X2の組合分会X3を結成して、労働条件に関する団体交渉に誠実に対応しなかったYに対し、その要求実現のためにミキサー車を占拠して生コンクリートの製造設備を使用させないなど複数回種々の組合活動を行ったことに対し、Yは譴責のほか分会長には一ヶ月の出勤停止等の懲戒処分を行い、またストライキ解除通告後の労働時間につき賃金を支給せず、さらに他の従業員に比較して低額な一時金しか支給しなかったことが不当労働行為であるとして、1.〔1〕X1がYに対し懲戒処分の無効確認及び不支給賃金の支払を請求し、〔2〕X1及びX2が不法行為に基づく慰謝料等の支払を請求し (甲事件)、2.X2が行ったストライキにおいてX1らがミキサー車を占拠して約六時間四〇分にわたり製造設備を使用させなかったことは正当な争議行為とはいえず違法な業務妨害であるとして、YがX2・X2委員長及びX3・X3分会長に対し不法行為による損害賠償の支払を請求し(乙事件)、3.X1ら四名が経営悪化を理由になされた整理解雇は合理的理由がなく、かつ不当労働行為にも該当し無効であるとして、雇用契約上の地位確認及び賃金支払を請求した(丙事件)ケースの控訴審で、2.について、業務妨害行為についてX2及びX2委員長の不法行為責任を認め、約八八万円の支払を命じた原審につき認容額を約四三万円に変更したほかは、1.については、〔1〕Xらの行為は正当な争議行為ではなく、これを理由とする譴責は有効であるが、分会長に対する出勤停止処分は処分の平等性、相対性を欠き無効であるとし、またスト解除後のスト参加者に対する労務受領拒否については民法五三六条二項により賃金が支払われるべきであるとし、〔2〕分会結成後の組合員への一連の取扱いは不法行為に該当し、慰謝料が支払われるべきであるとし、さらに3.についても、本件整理解雇はいずれも四要件を充足せず解雇権の濫用にあたり、また不当労働行為に該当するとしてXの請求を認容していた原審の判断が維持され、X及びYの控訴が一部認容・一部棄却された事例。
参照法条 労働基準法2章
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 2001年11月8日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 平成13年 (ネ) 1680 
裁判結果 一部変更、各控訴棄却(確定)
出典 労働判例815号14頁
審級関係 一審/07717/新潟地長岡支/平13. 2.15/平成7年(ワ)110号
評釈論文
判決理由 〔解雇-整理解雇-整理解雇基準・被解雇者選定の合理性〕
 一審被告会社の常務取締役Aは、本件解雇基準の「勤務状況に問題のある者」と「会社に対する貢献度の低い者」の意味を専ら服務規律に違反しているような人や成績に問題のある人としか想定しておらず(証人A)、本件整理解雇に先立って実施された休業では生コン部輸送部門が想定され、本件整理解雇の対象者である一審原告X4、同X5、同X6及び同X7がいずれも生コン部輸送担当運転手を本職とすることに照らすと、本件解雇基準の適用範囲が生コン部輸送部門に限られていたことは明らかというべきところ、前記のとおり、実態として一審被告会社の生コン部を縮小すべき必要性はこれを認めるに足りず、むしろこれに関連する管理部門、さらには一般管理部門を縮小すべきであったのに、これら管理部門を含めた整理解雇の候補者となるべき者の選定の努力がされた形跡は全くうかがえず、懲戒処分を含む規律違反の有無や人事査定等に基づく多分に主観的で合理性の乏しいものであったというほかない。