ID番号 | : | 07824 |
事件名 | : | 賃金等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | オー・エス・ケー事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | コンピューターシステムの開発を業とする有限会社Yに中途採用されたコンピューターシステム技術者Xが、入社約一年後に、業務内容、就業形態等はほとんど変更がないものの取締役に就任後、プログラムの販売目標を達成していないことを理由にXに一定期間にわたって給与が支払われなかったなどのトラブルが生じていたところ、その翌月、取締役辞任の要求を拒否したところ、YはXの雇用保険被保険者資格喪失手続を行ったことから、Yに対し、労働契約に基づき、前記給与が支払われなくなった月から再就職するまでの期間の給与の支払いを請求し、Xの取締役就任後の従業員たる地位の有無等が争われたケースで、Xは取締役就任後も、Yとの間に支配従属関係に基づいて労務を提供し賃金の支払を受ける労働契約関係が継続し、その給与は全額労務提供の対価たる賃金の性質を有する者と認められることから、Xは労働契約に基づき給与を請求できる地位にあるところ、YがXに対してなした解雇の意思表示は人員削減の必要性があったこと自体は否定できないとしても、解雇回避の可能性は存在し、また選定基準や解雇手続は不合理なものであったと推認できるとして、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当として是認することができず権利の濫用により無効として請求が認容された事例。 |
参照法条 | : | 労働基準法9条 労働基準法11条 労働基準法89条1項3号 民法1条3項 |
体系項目 | : | 労基法の基本原則(民事) / 労働者 / 取締役・監査役 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件 解雇(民事) / 解雇権の濫用 解雇(民事) / 解雇の承認・失効 |
裁判年月日 | : | 2001年11月19日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ワ) 15868 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労経速報1786号31頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労基法の基本原則-労働者-取締役・監査役〕 原告が取締役就任に伴って従業員たる地位を喪失したと認めるには至らない。かえって〔3〕ないし〔7〕によれば、原告の就業形態は取締役就任後もほとんど変更がなく、被告との間の支配従属関係に基づいて労務を提供し賃金の支払を受ける労働契約関係が継続し、その給与は全額労務提供の対価たる賃金の性質を有するものと認められる。よって、原告は被告に対し賃金として前記第二、2(五)の給与を請求できる地位にある。〔中略〕 〔解雇-整理解雇-整理解雇の要件〕 〔解雇-解雇権の濫用〕 〔1〕被告では、平成八年度以降売上高が大幅に減少し、平成一〇年度末(平成一一年八月期)には一二〇〇万円もの営業損失を計上したこと、他方、〔2〕平成一一年八月期でも、最終損益はわずかながら利益を計上し、当期未処理利益が五二〇〇万円に達していること、〔3〕原告は、販売済みの約三〇〇本のソフトの保守管理業務に現実に従事していたこと、〔4〕被告は、整理解雇を行うことを前提としてその必要性、解雇回避の可能性及び解雇者の選定基準の検討をしておらず、したがってまた、原告に対してもこれに関する説明をしていないこと、以上の事実が認められる。 ところで、使用者の解雇権の行使も、それが客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができない場合には権利の濫用として無効となるものと解するのが相当である。その中でも、いわゆる整理解雇は、労働者の落ち度によらないで、労働者から一方的に収入を得る手段を奪い、労働者にとって重大な結果をもたらすものであるから、このような解雇の効力については、慎重に判断されなければならず、人員削減の必要性があったかどうか、解雇回避努力を尽くしたかどうか、被解雇者の選定に妥当性があったかどうか、解雇手続が相当であったかどうか等について検討し、これらの要素を総合考慮の上、解雇の効力を判断するのが相当である。 上記〔1〕によれば人員削減の必要性があったこと自体は否定できないとしても、〔2〕ないし〔4〕によると、解雇回避の可能性は存し、また選定基準や解雇手続は不合理なものであったと推認できる。その他解雇の合理性を裏付けるに足りる資料は存しない。よって、本件解雇は客観的に合理的な理由を欠き社会通念上相当として是認することができず、権利の濫用として無効となる。〔中略〕 〔解雇-解雇の承認・失効〕 原告は被告に対し離職票を交付するように求めたが、それは生活のためやむを得ずしたことであり(原告本人)、解雇予告手当等の請求も、前記第二、2(四)のとおり、原告は被告に対し、一〇月二六日、「解雇異議通知」と題し、不当解雇であり、承服できないこと、解雇予告手当の他、割増分を含む退職金として四か月分の給与の支払を求め、その支払がない場合は解雇不当につき法的措置を取るとの書面を送付したものであるから、これらをもって解雇を異議なく承認する意思を表示したとは認められず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。 |