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ID番号 07835
事件名 損害賠償等請求、同反訴請求事件
いわゆる事件名 協立物産事件
争点
事案概要  食品原料等の輸入・販売会社であるXが、本訴において、その従業員であるY1が商品の仕入先の会社と共謀し、Xに対する商品供給を停止し、Xと競業関係にあるY2を設立したと主張して、Y1に対しては不法行為又は債務不履行による損害賠償を、Y2に対しては不法行為による損害賠償を求めたのに対して、Y2が、反訴においてXのY2に対する仮差押え決定の取得・執行及び本訴の提起が違法であるとして不法行為による損害賠償を求めたケースで、XのY1に対する請求が一部認容されるとともに、反訴が棄却された事例。
参照法条 民法623条
労働基準法2章
民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 競業避止義務
裁判年月日 1999年5月28日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成7年 (ワ) 19481 
平成9年 (ワ) 2198 
裁判結果 一部認容・一部棄却、反訴棄却(控訴(和解))
出典 時報1727号108頁
審級関係
評釈論文 西原慎治・早稲田法学77巻2号261~270頁2002年1月
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-競業避止義務〕
 労務者は、使用者との雇傭契約上の信義則に基づいて、使用者の正当な利益を不当に侵害してはならないという付随的な義務を負い、原告の就業規則三条もかかる義務を定めたものと解される。そこで、被告Y1の行為が雇傭契約上の付随義務に違反したか否かについて検討する。
 2 まず、原告が平成七年六月二九日に被告Y1を懲戒解雇したことは前示のとおりであるから、原告と被告Y1との雇用契約は同日まで継続し、したがって、被告Y1は同日まで雇傭契約上の付随義務を負うというべきである(被告Y1は、懲戒解雇の事実を争うが、同年五月一六日に原告に対して同年六月二九日をもって退職する旨届け出ていることから、原告と被告Y1との雇用契約が同日まで継続していたことに変わりはない。)。
 そして、前示のとおり、被告Y1は、原告においてY2社との取引を担当していながら同年四月ころから原告と競業関係に立つことになる被告会社の設立を準備し、同年五月二四日までにY2社が原告に商品の供給停止を通知することを知りながらこれを原告に告げず、かえって、同年六月には、商品の供給が停止されたことを前提として被告会社の設立手続を進めており、そのような被告Y1の行為は、雇傭契約に付随する競業避止義務に違反するというべきである(被告Y1は、退職届の提出後、二六日間の有給休暇をとっているが、有給休暇をとっていたことを理由として競業避止義務に反しないとすることはできない。)。