ID番号 | : | 07836 |
事件名 | : | 死亡退職金請求控訴、同参加事件、仮執行の原状回復及び損害賠償を命ずる裁判の申立事件 |
いわゆる事件名 | : | メンテナンス広島事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | Y会社代表者であったAが死亡したため、Yは、Aの遺族に対して退職慰労金を支払うことを決議したが、Aには内縁関係にあるX(Aが死亡するまで同居)と別居中であった法律上の配偶者であるC(参加人)がいたため、X・C双方の協議を求め、双方が合意しない限りいずれにも退職慰労金を支払わないとの態度を示したのに対して、XがYに対し、退職慰労金の支払を請求し、Cも、XとCとの間において退職慰労金がCに帰属することの確認及びYに対して退職慰労金の支払を請求したケースで、Xの請求を棄却し、Cの請求を認容した原判決につき、X・C双方が控訴していたが、本件退職慰労金はCに帰属するとして、X・C双方の控訴がともに棄却された事例。 |
参照法条 | : | 民法896条 労働基準法3章 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 退職金 / 退職慰労金 |
裁判年月日 | : | 2000年2月16日 |
裁判所名 | : | 広島高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成10年 (ネ) 363 平成11年 (ネ) 5 |
裁判結果 | : | 控訴棄却(確定) |
出典 | : | タイムズ1087号239頁 |
審級関係 | : | 一審/広島地/平10. 7. 7/平成9年(ワ)712号 |
評釈論文 | : | 岩城謙二・法令ニュース37巻8号16~21頁2002年8月 |
判決理由 | : | 〔賃金-退職金-退職慰労金〕 役員に対する退職慰労金は、基本的には、在職中の職務の功労に対する報賞であると解すべきであるが、同時に、死亡役員の残された遺族の生活補償の役割を果たすことも否定することはできず、また、報賞であることが必然的に相続財産であるとの結論をもたらすわけでもなく、退職慰労金が、株主総会の特別決議により発生するものであることを考えれば、本件退職慰労金が、Aの相続財産に属するか否かは、もっぱら、その支給を決定した本件総会決議が、Aの相続財産とする趣旨で同人の相続人を支払対象者としてなされたか否かによって決せられるものと解するのが相当である。〔中略〕 本件総会決議は、本件退職慰労金の支給対象者を「遺族」としたが、「遺族」が具体的に一審原告か一審参加人であるかについて、その認定が困難であったため、一審被告は、本件退職慰労金の具体的な受給者は、まず、一審原告と一審参加人との間で協議し、右協議が整わないときは、裁判所の判断に委ねるとの趣旨でなされたものと認めるのが相当である。 したがって、本件総会決議は、本件退職慰労金の受給者を一審原告及び一審参加人のいずれかであることを当然の前提としているから、本件退職慰労金はAの相続財産であるということはできない。〔中略〕 役員退職慰労金は、前記説示のように死亡役員の残された遺族の生活補償の役割を果たすことも否定できないところ、Bは、本件総会決議に先立ち、退職慰労金は本人死亡の場合には「遺族」に渡すことになるが、「遺族」の解釈について民法等と労働基準法等とでは食い違いがあるため、一審被告としては裁定を下すことができないことを説明していることからすれば、本件総会決議は、その前提として、本件退職慰労金の受給者は、本件退職金規程を適用して決定すべきであるとされていたことが推認できるのであり、そして、役員退職慰労金の性質から見て役員死亡の場合右規定を適用することが不合理であるとは認められないから、本件総会決議における支給対象者は、本件退職金規程を準用し、その趣旨を尊重することによって決するのが相当である。 |