ID番号 | : | 07844 |
事件名 | : | 損害賠償請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 東日本旅客鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | Yの経営する病院で病歴室に配転され入院患者のカルテの整理(通院カルテの回収・製本・収納、入院カルテの準備、送付等)の業務に従事する女子職員Xが、上肢に生じた痛み、しびれ等の症状を呈したことにつき、業務により職業性の頚腕肩症候群に罹患したとしてYに対して安全配慮義務の不履行に基づく損害賠償を請求したケースで、原審が、Xの症状と業務との間に相当因果関係を見いだすことができないとしたことにつき、Xが控訴していたが、病歴室への配転から頚腕肩症候群の診断を受けた時期(第一期)、平成二年の前記診断書提出の後から平成三年四月の病休までの時期(第二期)を区分し、第一期については、第一期の業務による上肢等への負担(物理的要因)と主観的負担感・精神的ストレス(心理的・精神的要因)とが総合作用して同症状を生じさせたものと推認するのが相当とし、相当因果関係を肯定した(第二期については、業務との因果関係を否定)が、Xが第一期に従事した業務は、客観的、一般的見地からは過重な業務に当たらないから、YがXに当該業務に従事させたことをもって安全配慮義務に違反したとはいえないとして、Xの控訴が棄却された事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 2000年8月28日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成11年 (ネ) 738 |
裁判結果 | : | 控訴棄却(上告・上告受理申立て) |
出典 | : | 時報1749号38頁 |
審級関係 | : | 一審/07255/東京地/平10.12.24/平成6年(ワ)19564号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 第一期に控訴人に生じた症状は、第一期の業務による上肢等への負担(物理的要因)がその原因の一つとなり、これに控訴人の受けた主観的負担感及び右業務に不本意に従事させられたことによる精神的ストレス(心理的・精神的要因)並びに既往症である変形性脊椎症(身体的要因)が複合して生じたものと認めるのが相当であり、第二期以降の症状も、右物理的要因からは大幅に又は完全に解放されたものの、なお右心理的・精神的要因からは解放されなかったことから、一時的に増悪し、又は継続したものと認めるのが相当であり、そして、右の各要因の中で、第一期の業務による右物理的要因は、これらの症状を発症させた主要な原因の一つであることを否定することができないものというべきである。 したがって、本件配転後の第一期の業務と控訴人に生じた症状との間の相当因果関係は、これを肯定することができるものということができる。 5 もっとも、右に述べたように、第二期の業務においては、控訴人は上肢等への負担が最も重かったと認められる大型ホチキスの作業から解放されたのであり、これにより右物理的要因は大きく減少したものと認めるべきことにかんがみれば、その業務が控訴人の症状に対して全く関係がないものということはできないにしても、第二期における症状の増悪又は継続の主要な原因は、右心理的・精神的要因及び身体的要因にあるものとみるべきものであって、第二期の業務がその症状の増悪又は継続の主要な原因を成したものと認めることはできないものというべきであり、そして、以上判示したところに照らし、第三期以降の業務と控訴人の症状の継続との関係についても、同様というべきである。 したがって、第二期以降の業務の内容は、控訴人の症状の推移との間に相当因果関係があるものということはできないというべきである。〔中略〕 控訴人が第一期において従事した業務は、これを事後的、結果的に見れば、控訴人にとって相対的、主観的に上肢等に重い負担のかかるものであったということができるが、客観的、一般的見地から過重な業務に当たるということのできないものであるから、被控訴人が控訴人をして右業務に従事させたこと自体をもって安全配慮義務を欠いたものということはできない。〔中略〕 以上のとおりであるから、控訴人に生じたその主張に係る症状の発症、増悪又は継続について、被控訴人に安全配慮義務違反があったと認めることはできない。 |