全 情 報

ID番号 07846
事件名 損害賠償請求事件
いわゆる事件名 セイシン企業事件
争点
事案概要  粉粒体処理装置の製造等を主たる業務とする会社Yの製造課で勤務していたXが、初めて造粒機ラインによる加工業務に就いたところ、造粒機に組合わされて設置されたロータリーバルブに右腕を捲き込まれ、右前腕切断の傷害を負い、入院加療、通院を経て、結果的に労働者災害補償保険法上、後遺傷害等級五級に該当する後遺傷害を負うこととなったためYに対し、雇用契約上の安全配慮義務違反、又は不法行為責任(民法七一七条)に基づき、損害賠償請求をしたケースで、YにはXとの雇用契約に基づき、Xに手を機械の中に入れることの危険を徹底的に認識させることができなかった過失、Xが事故当日実質的に造粒機ラインで稼働するのが初めてであったことを考慮して、安全確保の見地から、当日の担当者について配慮するべきであったのにこれを怠った過失が認められるとしたうえで、Xは意識的に右手を入れたことなどの諸事情によればXの過失は相当重大であると言わざるを得ないなどとして五〇パーセントの過失相殺をするのが相当であるとし、Xの後遺傷害を原因とする逸失利益を労働能力喪失率三〇パーセントとして認定し、休業補償給付や休業特別支給金等の損害填補を否定するなどして、Xの請求額約六〇五四万円のうち、約一七一一万円につき請求が認容された事例。
参照法条 民法415条
民法717条
民法418条
民法722条2項
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任
裁判年月日 2000年8月29日
裁判所名 東京地
裁判形式 判決
事件番号 平成10年 (ワ) 5728 
裁判結果 一部認容、一部棄却(各控訴)
出典 労働判例831号85頁
審級関係 控訴審/07857/東京高/平13. 3.29/平成12年(ネ)5031号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕
 被告には、原告との雇用契約に基づき、本件工場内で機械を作動しながら手を機械に入れて作業を行っていたという状況を放置し、原告に、手を機械の中に入れることの危険を徹底的に認識させることができなかった過失、及び、原告が、事故当日、実質的には造粒機ラインで稼働するのが初めてであったことを考慮して、安全確保の見地から、当日の担当者について配慮する(たとえば、その日だけは原告を指導できる作業員を原告と同じ第2工場に配置するなど)べきであったのに、これを怠った過失が認められる。〔中略〕
 過失相殺の割合であるが、まず、本件バルブはその作動中に下から手を入れることは予定されていない機械であること、次に、原告は、大学の材料工学科を卒業し、機械一般についてもそれなりの知識を有していたと認められること、さらには、本件バルブがその中に手を入れれば危険であることが明らかであるのに、原告は、意識的に右手を入れたことなどの諸事情によれば、原告の過失は相当重大であると言わざるを得ず、当時原告が時間に追われる(ママ)焦っていたことをも斟酌しても、50パーセントの過失相殺をするのが相当である。