ID番号 | : | 07856 |
事件名 | : | 損害賠償請求事件(736号)、損害賠償請求反訴事件(614号) |
いわゆる事件名 | : | M運輸事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 一般区域貨物自動車運送事業を営む会社Xの社員Yは、荷台に移動式の事務所等を積載してX所有のクレーン車を運転して走行中、クレーンのブームを縮め、フックをブーム先端の所定の位置に収納する義務があるのにこれを怠ったため、クレーンのブームを歩道橋に衝突させるという交通事故を起こしたため(XはYの同意を得て給料天引きにより四二万円を徴収)、XがYに対し、民法七〇九条及び七一五条三項に基づき、本件事故によって生じた損害の賠償(約四六八万円)を請求した(本訴)のに対し、X代表者が担当従業員に対し労災保険請求手続を取らないよう命じたため、未払となった労災保険金及びXが受領した源泉徴収還付金の支払を請求した(反訴)ケースで、本訴については、Yが責任を負うべきことは当事者間に争いがない事実であるところ、本件事故の経緯に照らすと、本件事故についてYに重過失があったとは認めがたく、またYには業務中の事故歴があるなどからXにおいてYが再度交通事故を起こす危険が予測できたというべきであるにもかかわらず、Xは適切なリスク管理を怠ったばかりか、本件事故に関する万全の予防策も講じなかったこと、給料から三万円継続して差し引いていたこと等から、本件事故により生じた総損害額(約一六九万円)の約二四・七パーセントに当たる四二万円を既に弁済したYに対し、更に損害賠償金の支払を求めたり求償権を行使することは損害の公平な見地から許されないというべきであるとして請求が棄却、反訴についてはXの受領した源泉徴収還付金の限度で認容された事例。 |
参照法条 | : | 民法709条 民法715条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働者の損害賠償義務 |
裁判年月日 | : | 2001年3月21日 |
裁判所名 | : | 那覇地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成11年 (ワ) 736 平成12年 (ワ) 614 |
裁判結果 | : | 棄却(736号)、一部認容・一部棄却(614号)(本訴控訴) |
出典 | : | 労働判例825号75頁 |
審級関係 | : | 控訴審/07888/福岡高那覇支/平13.12. 6/平成13年(ネ)70号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働者の損害賠償義務〕 本件事故につき被告が責任を負うべきことは当事者間に争いがない事実であるところ、前記認定の本件事故に至る経緯に照らすと、被告が本件自動車の円滑な転回のためにいったん伏せたクレーンのブームを斜めに上げたことはやむを得ない措置であったというべきであり、そうだとすると、本件事故について被告に重過失があったとは認め難い。 また、被告には業務中の事故歴があって、原告代表者は被告の業務遂行能力等を問題視していたのであるから、原告において被告が再度交通事故を起こす危険がある(ママ)を予測できたというべきであるが、そうであるにもかかわらず、原告は、損害保険契約の内容を見直すなどの適切なリスク管理を怠ったばかりか、被告に補助者をあてがわずに大型のスーパーハウスを積載させるなど、本件事故に対する万全の予防策も講じなかった。そして、本件事故が起きるや、被告の同意を得たとはいえ、給料から3万円を終期も決めずに継続して差し引いたため、被告の手取り額は13万円程度(〈証拠略〉)となっていたのであって、このことが被告に退社を決意させる遠因となったとも考えられるところである。 これらの点からすると、原告が、本件事故により生じた総損害額(169万6201円)の約24.7パーセントに当たる42万円を弁済した被告に対し、さらに損害賠償金の支払を求めたり求償権の行使をすることは、損害の公平な分担の見地から、許されないというべきである。 |