ID番号 | : | 07857 |
事件名 | : | 損害賠償請求各控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | セイシン企業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 粉粒体処理装置の製造等を主たる業務とする会社Yの製造課で勤務していたXが、B工場で初めて造粒機ラインによる加工業務に就いたところ、造粒機に組合わされて設置されたロータリーバルブに右腕を捲き込まれ、右前腕切断の傷害を負い、入院加療、通院を経て、結果的に労働者災害補償保険法上、後遺傷害等級五級に該当する後遺傷害を負うこととなったためYに対し、雇用契約上の安全配慮義務違反、又は不法行為責任(民法七一七条の土地工作物責任)に基づき、損害賠償を請求したケースの控訴審(X・Yがともに控訴)で、YのB工場においては、日常の一般的な安全教育、安全管理の面でも、またXが本件造粒機の操作に従事するに当たっての個別的な安全指導、安全管理の面でも、いずれも十分でなかったといわざるを得ず、またYには、作業場の安全確保のための配慮を欠いた過失もあると認められるとしたうえで、Xにも本件バルブを停止せず、作動したままの状態で不用意に右手を差し入れた過失があるとし、Y側の安全配慮義務違反の内容と、本件事故当時にXが置かれていた状況を比較考慮するとXの過失は四割であるとし、X側の過失割合を五割としていた原審の判断が変更され、Xの控訴が一部認容された事例。 |
参照法条 | : | 民法415条 民法717条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 安全配慮(保護)義務・使用者の責任 |
裁判年月日 | : | 2001年3月29日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 平成12年 (ネ) 5031 |
裁判結果 | : | 原判決変更(上告受理申立) |
出典 | : | 時報1773号152頁/労働判例831号78頁 |
審級関係 | : | 一審/07846/東京地/平12. 8.29/平成10年(ワ)5728号 |
評釈論文 | : | 小畑史子・労働基準55巻5号23~27頁2003年5月/青山武憲・法令ニュース37巻6号27~33頁2002年6月/大島道代・平成14年度主要民事判例解説〔判例タイムズ臨時増刊1125〕286~287頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約-労働契約上の権利義務-安全配慮(保護)義務・使用者の責任〕 当裁判所は、第1審原告の請求は、損害賠償金2163万3418円及びその遅延損害金の支払を求める限度で理由があるものと判断する。その理由は、次のとおりである。〔中略〕 第1審被告の利根川工場においては、日常の一般的な安全教育、安全管理の面でも、また第1審原告が本件造粒機の操作に従事するにあたっての個別的な安全指導、安全管理の面でも、いずれも十分でなかったといわざるを得ない。〔中略〕 第1審原告が造粒機の操作に従事するのは本件事故当日が最初であった。そのうえ、機械の構造や作業上及び安全上の注意事項などについての説明、指導は何も受けていなかったものである。したがって、第1審原告の勤務時間の割り当てや一緒に勤務する他の従業員の組み合わせなどに配慮して、第1審原告が適切な指導、監督を受けられる態勢を整える必要があったものといえる。 ところが、第1審被告は、第1審原告に午前1時からの深夜勤務を割り当てて、初めての造粒機の操作に一人で従事させた。しかも一緒に深夜勤務に就いたのは、1年前に入社したAだけで、同人はまだ機械の構造などについて十分な知識もなく、しかも他の作業を割り当てられて、別の場所でそれに従事しているといった状態であった。他に経験の豊かな従業員は配置されておらず、そのため第1審原告が材料詰まりを解消できず、作業が一向に進まないことに焦りや苛立ちを感じても、適切なアドバイスを受けることができなかったものである。 この点でも、第1審被告には、作業上の安全確保のための配慮を欠いた過失があると認められる。 |