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ID番号 07859
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 K興業事件
争点
事案概要  運送を業とする会社Xが、元従業員Yに対し、Yが在職中、X所有の四トントラックを運転して北陸道を走行中に同車のスリップによりトンネル側壁に衝突して車両を損傷させたことにつき、民法七〇九条に基づき損害賠償を請求したケースの控訴審で、本件事故により生じた損害は、修理費用の約五五万円であるとしたうえで(休車損害の発生は否定)、Yには、車両の運転手として事故の発生を防止すべく、路面の状況や車両の整備状況、積載物の重量に応じた速度で走行する等の安全運転すべき注意義務があるところ、これを怠ったことからスリップしてしまったと推認されるから本件事故の発生につきYの過失の寄与を否定することはできないとしつつ、諸般の事情に照らし損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度においてXはYに対し、損害の賠償を請求することができるにとどまるとして本件における諸般の事情を総合考慮した結果、Xが本件事故により被った損害のうちYに対して賠償を請求し得る範囲は、信義則上、損害額の五パーセントに当たる二万七七六六円とされたが、既にYからXに対して四万円が交付されており、それは損害の賠償をする趣旨としてとらえるほかないから、Yが負担すべき損害賠償額は既に補填済みであるとしてXの請求を棄却した原審の判断を相当として、Xの控訴が棄却された事例。
参照法条 民法709条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 労働者の損害賠償義務
裁判年月日 2001年4月11日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 平成12年 (ネ) 4339 
裁判結果 控訴棄却(確定)
出典 時報1770号101頁/労働判例825号79頁
審級関係 一審/07853/京都地/平12.11.21/平成12年(ワ)548号
評釈論文
判決理由 〔労働契約-労働契約上の権利義務-労働者の損害賠償義務〕
 当裁判所も、控訴人の本訴請求は理由がなく、棄却すべきであると判断する。その理由は、原判決「第三 争点に対する判断」記載のとおりであるから、これを引用する。〔中略〕
 本件のように、使用者が、その事業の執行につきなされた被用者の加害行為により、直接損害を被った場合には、使用者は、損害の公平な分担という見地から信義則上相当と認められる限度において、被用者に対し、上記損害の賠償を請求することができるにとどまること、本件において、信義則上相当と認められる限度を判断するに当たっては、控訴人の車両保険加入の有無、控訴人における労働条件、被控訴人の勤務態度等の諸事情を総合的に考慮すべきことは、原判決の説示するとおりである。そして、これらの諸事情に関し原判決が認定した事実に照らせば、控訴人が本件事故により被った損害のうち被控訴人に対して賠償を請求し得る範囲は、信義則上、修理費用55万5335円のうちの5パーセント相当額にとどまるというべきである。控訴人の主張は理由がなく、採用し難い。