全 情 報

ID番号 07860
事件名 地位保全等仮処分命令申立事件
いわゆる事件名 セントラルエンジニヤリング事件
争点
事案概要  平成八年一〇月一日、Y社代表取締役の誘いを受けて建築資材等の製造販売等を業とするYに入社し、Y社に在籍のままA社に出向扱いとされていたXが、平成一二年三月三一日付の書面で、同年四月二〇日付でY社を「休眠する」ため同日をもって退職してほしい旨の退職勧奨を受けたが、それを了承せず退職届の提出を拒んでいたところ、整理解雇され、その効力を争ったケースで、解雇が権利濫用として無効とされた事例。
参照法条 労働基準法89条3号
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の必要性
解雇(民事) / 解雇権の濫用
裁判年月日 2001年4月11日
裁判所名 大阪地
裁判形式 決定
事件番号 平成12年 (ヨ) 10091 
裁判結果 一部認容、一部却下
出典 労経速報1797号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由  債務者は、債権者を含む従業員等合計五名に対して、平成一二年三月三一日付けの「社員各位殿」と題する書面(書証略)で、同年四月二〇日付けで債務者を休眠することとしたので、同日をもって退職してほしいとの退職勧奨を行った(ただし、「休眠する」とは、法律上の休眠会社にするとの趣旨ではなく、事実上業務を停止するとの趣旨である)。しかし、債権者はこれを了承せず、退職届の提出も拒んでいたところ、同年五月一七日、債務者は債権者を同年四月二〇日付けで解雇する旨の通知をし、さらに同一書面で、債務者休眠のため、Aへの出向は取り止めること及び同日以降の賃金、経費の支払いもできない旨を通知した(書証略)。
 その後も、債権者は所属する労働組合を通じて解雇問題について債務者と協議をしてきたが、合意には至らないまま、同年七月三一日、債務者から離職票の交付を受け、同時に債権者は債務者に健康保険証を返還した。
 なお、債務者は現在も解散はしておらず、経理を担当する従業員及びパートタイマー従業員の二名が勤務している。
 従前から債務者とAとは、一体のものとして経営され、各種建築資材の開発、販売を行っていたことが認められるのであるが、債務者の主張によっても、債権者が出向先とされていたAはなお研究開発活動を継続しているにもかかわらず、債権者のみが形式的に在籍していた債務者の営業停止により、Aにおける研究開発活動からは除外され、その他の社員は、立花が代表者となっているBの従業員となって、A即ちC社長の依頼を受けて、しかも債務者が使用していた研究所において研究開発活動を行っているというのであるから、事実上、債権者が研究開発活動から除外された以外は、債務者が退職勧奨を行った以前と概ね変化はないということができる(もっとも、研究所の貸し主が第三者に対する転貸を理由に明け渡しを求めた事実によれば、研究室に出入りする者には変化があったであろうことが認められる)。
〔解雇-整理解雇-整理解雇の必要性〕
〔解雇-解雇権の濫用〕
 債務者は一旦その事業活動を停止し、Aに債務者従業員を移籍させたBとの間で取引をさせることによって、実質的に従前同様の研究、開発業務を継続しているものであると認められ、これに反する疎明資料は存在しないから、債務者の開発、営業部門を閉鎖するために、債権者を整理解雇したとの債務者の主張は理由がない。
 エ その他、債務者は、債権者の就業態度に問題があった旨主張するのであるが、その具体的事実については疎明がなされておらず、他に債権者に対する解雇を正当化する事情も見当たらない。
 以上によれば、債務者の債権者に対する解雇は、解雇権を濫用したものであるというべきであって、無効である。